日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-46
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一般演題 口演
BRAF阻害薬dabrafenibによるMAPK経路の活性化を介した皮脂産生の抑制的制御
*小岩井 利一岡村 沙耶佐藤 隆
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抄録

【目的】分子標的薬であるdabrafenibはMAPK経路のBRAFを阻害することで抗腫瘍活性を示すが、副作用として皮膚乾燥などの皮膚障害を引き起こす。皮膚乾燥には皮脂腺の機能異常が関係することから、皮脂腺への薬物の影響によるものと推察される。本研究は、ヒト皮脂腺代替モデルのハムスター脂腺細胞においてdabrafenibによる皮脂産生調節を細胞内情報伝達経路の観点から検討した。【方法】ハムスター脂腺細胞(HamSEB)における皮脂産生はNile Red染色法、脂肪滴形成はOil Red O染色法、ERKのリン酸化はウエスタンブロット法により解析した。【結果】HamSEBにおいてdabrafenibは恒常的な皮脂産生を抑制した。また、dabrafenibは既知の皮脂産生促進因子であるinsulinおよび5α-dihydrotestosterone (DHT)により増加した皮脂産生と脂肪滴形成をも抑制した。一方、dabrafenibはERKのリン酸化を促進した。そのリン酸化はinsulinおよびDHT存在下でさらに増強した。また、MEK阻害剤のtrametinibはdabrafenibとinsulinまたはDHTにより抑制した皮脂産生を促進した。【考察】HamSEBにおいてdabrafenibは恒常的およびinsulin/DHT誘導性の皮脂産生を抑制することが示唆された。さらに、その抑制的制御はdabrafenibによるERKリン酸化促進に寄与することが判明した。したがって、dabrafenibによる皮膚乾燥といった皮膚障害の発症には、そのERKリン酸化促進に起因した皮脂の産生抑制が関与する可能性が示唆される。

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