日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-101S
会議情報

一般演題 ポスター
低分子医薬品による下部消化管副作用に対する非臨床毒性試験の予測性
*齋藤 将有馬 瑞貴青木 沙織唐澤 史奈吉永 明葵乃髙石 雅樹小林 章男
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】

臨床試験における被験者のリスクマネジメントでは、非臨床試験成績が重要な役割を果たしており、毒性試験の結果及び考察をもとにした副作用予測は、被験者リスクの軽減につながっている。毒性試験による臨床副作用の予測性を検証し、予測性を向上させることは、被験者リスク最小化のために極めて重要な課題である。

下痢、便秘など下部消化管の副作用は、臨床試験において比較的高頻度で認められ、上市後の服薬アドヒアランスに影響を及ぼすことが知られている。本発表では、近年承認された低分子医薬品(抗悪性腫瘍薬、自己免疫疾患治療薬、抗糖尿病薬など)を調査対象として、下部消化管の副作用に対する毒性試験の予測性に関する調査結果を報告する。

【方法】

近年承認された抗悪性腫瘍薬、自己免疫疾患治療薬、抗糖尿病薬(いずれも低分子)の申請資料概要、インタビューフォーム、RMP資材を用いて、被験薬に起因する下部消化管にかかわる有害事象(以下、副作用)を抽出し、同様の所見が非臨床毒性試験で認められているかを調査した。

【結果および考察】

今回調査した医薬品では、下部消化管の臨床副作用として、主に下痢あるいは便秘が認められていた。非臨床毒性試験では、適応症にかかわらず、多くの医薬品でこれらの副作用に関連した所見が認められ、下痢や便秘の予測性が高いという結果であった。この結果は、低分子医薬品の毒性試験は下痢や便秘の予測性が高いという過去の調査結果と同様であった。なお、これらの予測性が高い理由は、下部消化管の生理機能に大きな種差がないこと、毒性試験の用量設定が最適化されていることなどが考えられた。

一方、胃部不快感、腹痛などの感覚的な副作用は、毒性試験で関連した所見が認められておらず、予測性が低かった。これら予測性が低い副作用があることは、非臨床毒性試験の大きな課題と考えられる。

著者関連情報
© 2024 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top