日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-126E
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コレステロール性胆石症モデルマウス由来胆嚢オルガノイドの開発とその応用
*山本 晴望月 まりあ臼井 達哉佐々木 一昭
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抄録

【背景】コレステロール性胆石症とは、胆石症の中でも最も一般的な疾患である。近年、胆石症の原因の一つとして胆嚢の粘液分泌能や運動能といった胆嚢の機能変化があることが報告されているが、胆嚢粘膜の機能変化に関わる詳細なメカニズムは明らかになっていない。

現在胆石症モデルマウスを用いた薬効評価方法がある一方で、摘出できる胆嚢組織が少量である点や多くのマウスを必要とするという動物倫理の観点から、より効率的なモデルの探索が喫緊の課題である。オルガノイド培養法は、生体構造を模倣しながら、上皮組織の細胞構成、機能を再現しうるため、in vitroの培養モデルとして着目されている。しかしながら、胆石症の病態を再現した患者由来オルガノイドモデルはいまだ確立されていない。

【目的】胆石症の病態メカニズムの解明や生体での薬効評価につながる新たな培養モデルとして、「コレステロール性胆石症マウス由来胆嚢オルガノイド」を開発し、その有用性について検討を行った。

【材料と方法】誘発食を4週間あるいは8週間マウスに給餌し、胆石症モデルマウスを作成した後に、臓器を摘出し、胆石の形成や胆嚢組織の病理学的評価や遺伝子解析などを行った。また、胆嚢組織の一部を用いてオルガノイド培養を行い、元の胆嚢組織との組織構造や粘液産生能などを比較した。

【結果】誘発食を給餌したマウスでは胆石の形成が観察された。4週間の給餌を行ったマウスでは胆嚢組織構造はコントロール群に比べて違いはなかったが、オルガノイドの大きさが有意に増加した。8週の給餌を行ったマウスの胆嚢組織では壁の肥厚や炎症が認められ、オルガノイドの大きさも有意に増加した。RNAシークエンスではコントロール群ならびに誘発食給餌群で有意な遺伝子発現プロファイルの差が認められた。

【考察】コレステロール性胆石症マウス由来胆嚢オルガノイドが胆石症の病態を示しているおり、さらに正常オルガノイドとの比較により胆石症が胆嚢がんの発症・進行に寄与することが示唆された。

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