日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-41S
会議情報

一般演題 ポスター
ATPによるP2Y2-Aktシグナルを介した内皮細胞のパールカン発現の抑制
*池内 璃仁中野 毅原 崇人北畠 和己山本 千夏月本 光俊藤江 智也鍜冶 利幸
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】パールカンは,アンチトロンビンIIIや増殖因子FGF-2の活性化を通じて,血管内皮細胞の抗凝固および増殖活性を調節しているヘパラン硫酸プロテオグリカンの大型分子種である。パールカン発現の変化は,動脈硬化症などの炎症性の血管病変の増悪と密接に関係するが,その詳細な機構は不明である。炎症性の血管病変では細胞および血小板から高濃度のATPが分泌され,プリン受容体を介して細胞機能を調節している。本研究では,ATPが内皮細胞のパールカン発現に及ぼす影響と,そのメカニズムの解明を目的とした。【方法】培養ウシ大動脈内皮細胞をATPで処理し,パールカンコアタンパク質およびそのmRNA発現はWestern Blotおよびreal-time RT-PCRによりそれぞれ解析した。siRNAはリポフェクション法により導入した。【結果・考察】内皮細胞をATPで処理したとき,液相のパールカンコアタンパク質およびmRNA発現の減少が認められた。ADPやアデノシンでは減少作用は認められず,細胞膜貫通型ヘパラン硫酸プロテオグリカンのシンデカン-1およびシンデカン-4もATPにより減少した。内皮細胞に構成的に発現しているプリン受容体(P2X4R,P2X7R,P2Y1RおよびP2Y2R)の発現をそれぞれ抑制したとき, P2Y2受容体のノックダウンによりATPによるパールカン発現低下の回復が認められた。ATPによりシグナル分子Aktの活性化が抑制され,P2Y2受容体発現の抑制によりこのAktの抑制は回復した。Akt阻害剤であるAkt inhibitor Ⅷは,ATPと同様のパールカンmRNA発現の抑制効果を示したが,Akt活性化剤SC79によるパールカンmRNA発現に変化は認められなかった。以上より,ATPは内皮細胞のパールカンコアタンパク質発現を抑制し,この抑制にはP2Y2R-Aktシグナルの抑制を介在することが示唆された。炎症性の血管病変では,液相に放出されたATPによるパールカン発現の抑制が抗凝固活性の抑制を通じた血栓形成の誘導に関与することが示唆される。

著者関連情報
© 2024 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top