日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-61S
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一般演題 ポスター
シスプラチンの腎毒性に対して時計遺伝子Cry2は毒性を軽減させる
*鳥本 晋太郎富永 サラ前田 徹横田 理松井 敦聡稲垣 直樹三浦 伸彦吉岡 弘毅
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抄録

【目的】シスプラチン (CDDP) の腎毒性には感受性時刻差が存在し、その機序は時計遺伝子であるBmal1やClockの関与が明らかとなっている。また、Periodなどの他の時計遺伝子が肝毒性の程度を制御する報告はあるもののCDDPについては前述の時計遺伝子以外は知られていない。そこでCDDPの感受性時刻差に影響を及ぼす時計遺伝子としてBmal1、Clock以外の7種類の時計遺伝子の関与について検討を行ったので報告する。

【方法】マウス近位尿細管細胞株MuRTE61細胞に対してCDDP (0-20 µM)を24時間処理した際の細胞生存率を評価し、CDDP (10 µM) を処理した際の時計遺伝子の発現量を測定した。また、Cry2を過剰発現させた条件下でCDDP (0-20 µM) を処理した際の細胞生存率を評価した。CDDPによる毒性発現に関連する因子 (Cleaved CASPASE-3など)を解析し、CDDPの流入や排泄に関与するトランスポーターとCry2の関連性について検討した。

【結果および考察】CDDPで細胞の生存率が低下した濃度において、測定した7種類の時計遺伝子の中でCry2の発現量のみ有意に増加した。Cry2を過剰発現させるとCDDPによる腎毒性が軽減されるとともに毒性発現に関連する因子 (Cleaved CASPASE-3など)の割合が減少した。さらに、Cry2を過剰発現させた細胞ではPtの細胞内蓄積量が減少し、排泄に関与するトランスポーターAtp7aおよびMrp2で発現量上昇が認められた。以上の結果から、Cry2もCDDPの感受性時刻差を規定する時計遺伝子であり、Ptを細胞内から排出するトランスポーター (Atp7a、Mrp2) の発現を増加させることでCDDPの腎毒性を軽減していることが示唆された。

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