主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
Ames試験は医薬品や工業製品に含まれる化学物質のDNAに対する作用(変異原性)を評価する代表的な試験である。Ames試験では、陰性対照のコロニー数の2倍以上のコロニーが検出された場合に陽性と判定される。しかし、コロニー数が僅かに2倍を超える場合もあれば、コロニー数が2倍を大幅に超える場合もあるため、同じ陽性判定であっても、変異原性の強さは異なる可能性がある点は留意する必要がある。Ames試験における変異原性の強さを示す指標の1つとして、比活性値が知られている。比活性値は、試験で検出されたコロニー数と陰性対照におけるコロニー数の差を用量で割った値として定義され、値が高いほど変異原性が強い。また、安衛法では比活性値が1,000を超える化学物質を「強い変異原性」と扱うなど、変異原性強度の区分基準としても使用されている。近年、化学物質の構造情報のみからAmes試験の判定結果を予測するin silico(QSAR)の技術開発および活用が盛んである。QSARを活用することで、変異原性を安価かつ高速に評価することが可能となる。しかし、現状としてAmes試験の比活性値のように変異原性の強度情報を取得可能なソフトウェアは存在しない。そのため、変異原性陽性が検出された場合、対象の化学物質を構造改変することによる変異原性回避の余地があるのか、それとも困難なのかを把握することが難しい。また、開発初期に変異原性の強度情報を知ることができれば、安衛法上の必要措置に早期に対応することが可能となる。そこで我々は、社内および公共の比活性値データを用いてAmes試験における変異原性の強度を予測する機械学習モデルを構築した。さらに、構築した機械学習モデルを変異原性予測システムに組み込むことで、陰性・陽性の2値だけでなく、変異原性の強度情報も取得可能なシステムへと発展させた。