主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
現在野生鳥類において鉛汚染は深刻な環境汚染問題である。狩猟における鉛散弾の使用、鉛製釣錘などから鉛を摂取することにより、様々な鳥類において健康被害が及んでいることが本邦含め全世界的に報告されている。鉛中毒は急性毒性として神経症状、貧血、消化器症状のほかに慢性・亜慢性的な影響として腎障害、免疫不全、繁殖障害を引き起こすことが知られている。特に、鉛の引き起こす免疫不全は、鳥類が自然宿主である鳥インフルエンザの易感染性、ひいては蔓延との関連性も考慮すべきであり、野生動物のみならず人を含めた感染症の蔓延を防ぐうえでも地球規模で取り組むべき課題となる。また、野生鳥類のような繁殖障害、免疫不全が個体数の減少、ひいては生態系影響に大きくかかわる生物種において、特に鉛汚染の及ぼす毒性影響を正確に把握することが求められる。実際の野生鳥類における鉛汚染モニタリングにおいて、希少種や生態系高次に位置し重要な種となりうる猛禽類を対象とすることは重要である一方、サンプルが限られる、地域が限局しうる、といった問題により全国区におけるモニタリングは不十分である。そこで比較的全国域に生息しておりサンプル入手が容易であるカモ等の水鳥における鉛汚染モニタリングが野生鳥類の汚染状況を把握するうえで有用となる。このような現状を踏まえ、現在我々は鉛汚染による全国区の野生鳥類への毒性影響を正確に把握する足掛かりとして、野生鳥類、特に水鳥における臓器中鉛濃度分析を環境省の請負業務として行っている。本発表では野生鳥類の鉛汚染状況の現状の共有、昨年度より始まった本事業のスタートアップ、現状や今後の展望について共有出来たらと考えている。