日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S15-3
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シンポジウム15: 鳥の鉛中毒:国内で「今」起きている健康被害
狩猟統計データを活用した本州に分布する猛禽類の鉛曝露リスク評価
*大沼 学
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抄録

猛禽類の鉛曝露リスク評価は、狩猟統計の中から銃によって実施されたデータを抽出して実施した。海外や北海道における猛禽類の鉛中毒の発生状況から、猛禽類における鉛汚染源としては鉛製銃弾が最も重要であることが判明している。また、我々の調査でも、①本州においても、北海道と同様に、狩猟残滓に猛禽類が集まっている、②本州以南でも猛禽類によるカモ類の捕食が確認されている、③獣肉の鉛濃度は検出限界以下であった、④カモ類の血中鉛濃度を測定した結果、鉛濃度が高値を示す個体がいる、といったことが明らかになった。そのため、本州以南に分布する猛禽類の鉛汚染源も、狩猟残滓に残った鉛弾の破片やカモ類が保持する鉛散弾といった鉛製銃弾である可能性が高いと考えられた。鉛暴露リスク評価のため、猛禽類4種(オオタカ、ハヤブサ、クマタカ、イヌワシ)の分布地域と、銃による狩猟活動の規模を示す年平均狩猟数データを統合し、猛禽類が分布し、かつ銃による狩猟が盛んな地域を「ホットスポット」として特定した。分布域内でのホットスポットの占める比率を種別に分析したところ、オオタカとハヤブサは高リスクホットスポットに分布する割合が高く、特に鉛曝露のリスクが高いことが示された。一方、クマタカは中から低リスクホットスポットに分布する割合が高く、イヌワシは比較的低リスクの地域に多く分布していることが確認された。さらに、分布する猛禽類の種数が多く、かつ狩猟活動が盛んな地域を特定するため4種のデータを統合した。その結果、猛禽類が鉛製銃弾を介して、鉛に曝露されるリスクが特に高い地域を特定することができた。このような地域から優先的に鉛製銃弾の使用規制を開始することで、希少な猛禽類の鉛曝露リスクを低減できると考えられる。

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