主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
近年、従来の低分子薬剤に加え、抗体、核酸、遺伝子等のいわゆる「新規薬物モダリティ」の研究開発が世界的に盛んになってきており、実用化例も増加している。また、mRNAワクチンに代表されるようにドラッグデリバリーシステム(DDS)が活用され、生体内での安定化や、狙った臓器あるいは標的へ薬物を選択的に送達することで、安全かつ高い有効性を期待した薬剤の研究も盛んに行われている。
薬物動態学では通常、PKPD (pharmacokinetics-pharmacodynamics)やTKTD (toxicokinetics-toxicodynamics)を考慮する際に血中薬物濃度を指標とすることが一般的だが、特に新規薬物モダリティにおいては分子サイズの大きさや水溶性等の物理化学的性質に起因して、血中濃度が組織中の標的近傍濃度を正確に反映しないことが多く、その存在量も極微量なケースが多い。さらに、組織内の薬物分布は均一でなくヘテロな様相を示すことが多いため、組織を摘出しホモジナイズ(均一化)して得られる薬物濃度情報が、真のPKPD/TKTDを反映しないケースが見受けられる。また、適用するDDSの種類によって組織移行性が変化しうる場合があり、ドラッグデザインへの活用や正確なPKPD/TKTDを理解するために、微小環境における薬物の局在を定量的に評価する方法論が必要とされる。
免疫組織化学染色(IHC)は、生体内マーカーや薬物の局在を可視化するために広く使用されているが、偏向かつ極微量の組織内局在が想定される新規薬物モダリティの動態評価においては、感度や定量性の点で超えるべきハードルがあった。本発表では、新規薬物モダリティ創薬における定量的局所イメージングの重要性に触れるとともに、高感度・定量的IHC技術Quanticell®を用いた製薬企業での活用事例を紹介し、議論したい。