日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-3
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シンポジウム22: 新薬開発における薬剤性痙攣の評価 ―非臨床における痙攣リスク評価の強化―
ラット脳波からの薬剤性痙攣予測
*木下 健一
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抄録

薬剤によって惹起される痙攣は,神経毒性における重篤な副作用の1つであり,臨床試験を行う上で十分な安全域が要求されている。痙攣は,前臨床試験では動物の症状観察を行うことによって評価されているが,持続的な観察や夜間の観察も必要な場合があり,多くの労力が必要となる。また,症状観察だけでは,痙攣に至る症状かを判断しにくい場合もある。

脳波は,神経の活動をダイレクトかつ経時的に検出することが出来,痙攣時の特徴的な発作波形が動物やヒトで報告されているため,痙攣評価には脳波が有用な評価方法の一つである。しかしながら,痙攣に至らない用量での脳波を用いて痙攣ポテンシャルを評価した報告は少なく,脳波を痙攣予測のバイオマーカーとして使用することは難しいのが現状である。もし,痙攣に至らない用量の脳波から痙攣を予測することが出来れば,痙攣のポテンシャルを検出する手法として脳波が有用であると考えられる。そこで我々は、痙攣に至る前の脳波を用いて、痙攣ポテンシャルを検出する新しい解析法の構築を試みた。

数種の痙攣誘発化合物を用いて,痙攣に至らない用量をラットに投与し,脳波を測定した。得られた脳波から周波数ごとに10種のパラメータを算出し,多変量解析により痙攣ポテンシャルの検出が可能な解析方法の構築を行った。その結果,検討に用いた化合物以外でも痙攣ポテンシャルの検出が可能であることが分かった。これらのことから,ラットにおける脳波の解析は,痙攣ポテンシャルを検出する手法として有用であることが明らかとなった。

我々は,各化合物の脳波検討に用いた用量における脳脊髄液中濃度の取得やin vitro MEA評価系における痙攣ポテンシャルの検出についても検討している。脳波及びMEAでの痙攣ポテンシャル検出についての比較を行い,脳波とMEAを組み合わせた痙攣の評価フローを構築したので,それについても報告する。

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