主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
薬剤誘発性の痙攣は臨床において重篤な有害事象であり,非臨床研究で痙攣がみられた医薬品候補はその開発に大きな困難を伴うことから,高い精度で痙攣リスクを予測できるin vitro評価系の構築が強く必要とされている。本発表では,in vivoにおいて痙攣誘発が報告されている薬物の脳脊髄液(CSF)中濃度を参考に,初代培養ラット大脳皮質神経細胞と微小電極アレイ(MEA)システムを用いて構築した痙攣リスク評価系を紹介する。In vivo試験では,異なる作用機序を有する14種の痙攣誘発薬について,ラットに痙攣を誘発する用量,または痙攣を誘発せずに神経症状のみを誘発する用量を腹腔内または静脈内投与し,痙攣を誘発した用量では痙攣を観察した時点で採取した,痙攣を誘発しなかった用量では痙攣を誘発した用量と同じ経過時間で採取したCSF中の薬物濃度をLC-MS/MSで測定し,各薬物の痙攣誘発閾値を明らかにした。In vitro試験では,in vivo試験と同種の初代培養ラット大脳皮質神経細胞をMEAプレート上で培養し,in vivo試験で実施した14種の痙攣誘発薬を幅広い濃度で処理した5分静置後の電気生理学的変化をMEAシステムにより測定した。算出された多様なパラメータの中から複数の薬物で共通して増加傾向を示したネットワークバースト頻度(NBF)に注目してin vivo実験結果と比較検討した。さらに,データのばらつきを低減させるための除外基準を考案し適用した。その結果,14種の異なる作用機序の痙攣誘発薬のうち9種はMEAシステム実験でNBF増加がみられたときの薬物濃度とラットで痙攣を誘発したCSF中薬物濃度がよく相関した。初代培養ラット大脳皮質神経細胞を用いたin vitro MEAシステム評価系におけるNBFの増加は,特定の作用機序の薬物の痙攣リスクを予測できる評価系となりうることが示された。