日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-5
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シンポジウム22: 新薬開発における薬剤性痙攣の評価 ―非臨床における痙攣リスク評価の強化―
臨床現場におけるけいれん(薬物が原因のけいれん)のご紹介
*松本 理器
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抄録

けいれんとは持続的な筋収縮(強直期)から間代的な筋収縮(間代期)へ移行する一連の発作性の運動症状である。何らかの原因で大脳皮質の細胞(ニューロン)が過剰興奮することでけいれん(専門用語では強直間代発作)が出現する。大脳の神経細胞の過剰興奮が一斉に出現すれば全身けいれんが出現する。一方、局所の過剰興奮から始まる場合は、体の一部からけいれんが出現しその後体全体に広がる。原因としては、急性の脳障害と慢性の脳病態であるてんかんが挙げられる。脳炎、脳梗塞、脳出血といった脳そのもの、ないし電解質異常、低血糖、中毒や代謝異常など全身の病態により急性の脳障害を生じた際に、急性症候性発作としてけいれん発作が生じうる。一方、てんかんでは、大脳皮質ニューロンが過剰興奮する性質を獲得することで、発作性の脳症状であるてんかん発作が繰り返し出現する。てんかんでは様々な発作が出現し、強直間代発作はその代表的発作であるが、けいれんを伴わない意識減損が中心の発作も出現する。薬剤性けいれんは、大脳皮質の興奮・抑制バランスが変容し、過興奮性(てんかん閾値)を下げることで生じ、てんかんの初発発作を誘発することもある。薬剤誘発性けいれんの分子機序としては、代謝経路の障害、神経伝達物質放出の変容、神経毒性による神経細胞死、シナプス上の受容体の変容、電位依存性イオンチャネルの変容が想定される。本講演では、脳神経内科実地臨床の現場から実際のけいれんやてんかん発作について紹介し、薬剤による誘発のリスクを自験例を交えて概説する。

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