日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S28-1
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シンポジウム28: 付加体科学部会シンポジウム:Unity in diversity: 付加体がつなぐ毒性学
環境中化学物質曝露によるタンパク質との付加体生成を介したレドックスシグナル伝達活性化
*安孫子 ユミ
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抄録

ヒトを取り巻く生活環境中には多種多様な化学物質が存在し,日常生活を介して曝露されている.我々は,環境中化学物質の中でも,親電子性もしくは電子受容体としての性質を有する反応性の高い化学物質に着目している.親電子物質および電子受容体は,それぞれ生体内高分子であるタンパク質や核酸を直接的にもしくは活性酸素種の産生を介して,生体内高分子であるタンパク質や核酸を化学修飾して付加体を形成する.我々は,低濃度の親電子物質および電子受容体曝露時はタンパク質のシステイン残基 (Cys) への付加体形成を介したレドックスシグナル伝達を活性化するが,曝露濃度増加に伴って非特異的な付加体形成を引き起こし,当該シグナル伝達経路は破綻して細胞死を引き起こすことを明らかにしてきた.また,代表的なレドックスシグナルであるPTP1B/EGFRシグナルおよびKeap1/Nrf2シグナルをモデルとして,親電子物質曝露による当該シグナル活性化が,複数の親電子物質への複合的な曝露により亢進することを報告した.細胞死においても同様に,複合曝露では単独曝露で細胞死が見られた濃度よりも低濃度から細胞が死滅した.曝露されるそれぞれの環境中親電子物質および電子受容体の量が僅かであっても,タンパク質のCys等を介して付加体を形成する多種多様な環境因子に複合的に曝露されることで,修飾される総量が増加して,そのリスクが相加もしくは相乗的に高まることが予想される.本シンポジウムでは,環境中化学物質とタンパク質との付加体生成を介したレドックスシグナル伝達について,これまでに我々が得た知見を紹介する.

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