日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S30-3
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シンポジウム30: 個人差を反映した医薬品評価の現状と今後の展望
性別を考慮した医薬品の毒性評価
*黒川 洵子清水 聡史児玉 昌美渡邊 泰秀坂本 多穗
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抄録

薬の効き方や副作用には男女差があることが明らかとなってきており、生物医学研究では早急な対応が求められている。2015年6月に、ヒトおよびほ乳類を用いた全ての研究計画において、性による結果の違いの可能性を議論することがNIHグラント申請の要件とされたことは、性差研究への注目度が急速に高まる発端となった。

性差研究の高まりにより、生殖器以外の臓器の疾患においても、発症・診断・進展のいたるところに性差がみられ、性ホルモンの作用によりそのメカニズムが説明されたものもあるが、多くは不明のままである。我々の研究室では、主に循環器領域における性差に着目した研究を遂行している。例えば、薬剤による心室再分極遅延(QT間隔延長)リスクや心臓突然死発症率は女性で高いことが知られる。この性差には心電図QT間隔が成人女性で同世代の男性よりも長いことが関連しており、思春期や性周期における変化から性ホルモンの影響が示唆されてきた。我々は、げっ歯類心筋の解析により、NOを介した心筋細胞の性ホルモンシグナルが性差に関与しているのではないかと提唱している。しかし、このような基礎研究の結果をどのように臨床に反映させるかについては、まだ決まったストラテジーはないのが現状である。我々は、ヒトiPS細胞やシミュレーションを取り入れた統合的なアプローチにより、性差機構の解明を目指している。今回のシンポジウムでは我々の研究の最新情報を紹介し、参加者の先生方と、今後の課題についての議論を深めたいと考えている。

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