主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
大気中の汚染微粒子の吸入は、肺の慢性炎症であるアレルギー疾患発症の要因の一つであると考えられている。このような微粒子は免疫活性化物質「アジュバント」として機能することが知られており、吸入により肺の深部に到達し、気道や肺の免疫細胞を活性化させることによりアレルギー性炎症を引き起こすと考えられている。しかしながら、無機の微粒子がどのような機序で免疫細胞を活性化させるのか?そのアジュバント作用の詳細なメカニズムについては十分には明らかにされていない。吸入により気道や肺深部に沈着した微粒子は肺胞マクロファージなどの食細胞に貪食され肺から排出されると考えられている。そこで我々は肺胞マクロファージの微粒子応答に注目し研究を進めている。
本研究ではアレルギー性炎症を誘導する炎症性微粒子として主にアルミニウム塩(アラム)やシリカを用いて解析を進めている。炎症性微粒子にて肺胞マクロファージを刺激することで炎症性サイトカインであるインターロイキン-1α(IL-1α)や炎症性脂質メディエーターの誘導が認められた。肺胞マクロファージからのIL-1αの放出は微粒子によって誘導された細胞死によるものであり、さらに放出されたIL-1αは、in vivoにおいてアレルギー性炎症を誘発するイムノグロブリンE(IgE)の誘導に関与していた。しかしながら同じアルミニウムでも酸化アルミニウム(Al2O3)の刺激ではIL-1αや脂質メディエーターの放出は認められず、細胞死やIgE誘導も弱かった。これらの結果は、微粒子の化学的特性が肺胞マクロファージの活性化や細胞死、ひいては獲得免疫の誘導にも影響を及ぼしていることを示唆している本シンポジウムでは微粒子の化学的特性が肺胞マクロファージ活性化に及ぼす影響について紹介したい