主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
薬物性肝障害は臨床試験の中止や市販後の撤退の主たる原因となるため、適切な評価を実施し、薬効だけでなく安全性にも優れた化合物を選定することが求められる。その評価項目としてミトコンドリア毒性があり、これまでにいくつかその毒性を検出すつ手法が確立されてきた。これらはスループットに優れるなどの点から汎用されているが、それ以外の未検討の評価項目の重要性を否定するものではない。その中で我々は重篤な肝障害を起こす薬物に共通するミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)に着目して検討を進めてきた。これまでは肝細胞に着目した研究にとどまっていたが、ミトコンドリアはほとんどの細胞で有しており、障害を増悪させる炎症細胞でのMPTの影響を詳細に評価されていない。その点について、骨髄由来細胞のMPTの構成因子を欠損させたマウスにアセトアミノフェンを投与したところ肝毒性発症において血小板の関与を示唆する結果が得られた。また、これまでMPTの評価が積極的に行われない要因として、肝障害に及ぼす寄与が不明だけでなく評価時には実験動物より単離した臓器由来のミトコンドリアが必要であり、近年の動物実験3Rの原則から代替手法の構築が望ましい。この点について、血小板にてMPTが起こると通常とは異なる活性化を示すため、血小板の活性化を指標とすることで従来のMPT評価を代替手法に関する検討もすすめ、従来手法と比較してある一定の相関を認めた。また肝障害予測の難しさには種差が挙げられる。種差にはヒトと動物間だけでなく、実験動物間にても化合物投与時の反応性が異なるため、実験目的に応じて適切な動物種の選択は重要である。この点についてラット・マウスどちらでもMPT誘導する能力があるリポ多糖を用いて動物間種差についても検討してきた。このような点も踏まえた発表を通して皆様とご議論を深めたいと考えている。