日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-4
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シンポジウム4: 生体金属部会シンポジウム: 〜金属による免疫毒性〜
ヒ素によるナチュラルキラー細胞の機能障害
*角 大悟
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抄録

バングラデシュやカンボジアなどアジア諸地域を代表として、全世界において飲料水への高濃度のヒ素化合物の混入による慢性ヒ素中毒が深刻な問題となっている。ヒ素化合物への慢性的な曝露は甚大な健康影響を与えるが、その中でも発がんは深刻であり、WHOの調査によると、バングラデシュでは、数千万人の住民が井戸水を介してヒ素に曝露されており、年間200,000〜270,000のヒ素曝露患者が、がんが原因で死亡している。

ヒ素曝露による発がんの機序を明らかにすることを目的とした研究内容は多く報告されているが、その詳細な機序はこれまで誰も達成できていない。その根拠として、ヒ素化合物はヒトに対する発がんが認められているCarcinogenであるものの、動物モデルでそれを再現することができないことが挙げられる。これらの報告や事象から、ヒ素化合物は、「非遺伝性発がん物質」として発がんを誘発していると考える。

一方で、当研究室では、ヒ素化合物による発がん機序において「免疫のシステムが障害を受けているのではないか」と考え検討を進めている。その過程で自然免疫においてがん細胞の殺傷に関わるナチュラルキラー(NK)細胞の機能がヒ素化合物によって減弱していることを見出した。本シンポジウムでは、NK細胞が持つがん細胞への殺傷機能がヒ素化合物により障害を受ける機序について紹介する。

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