日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-4
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シンポジウム6: 【日本中毒学会合同シンポジウム】トキシドロームと分子毒性学的新知見
化学テロのトキシドロームについて
*早川 桂
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抄録

Global Terrorism Databaseによるとテロリズムの総件数は2010年以降より急増し、世界中では年間10,000件を超える攻撃が発生している。攻撃の種類としては爆発物によるものが圧倒的に多いものの、化学物質によるChemicalテロ(Cテロ)も少なくない。また、もともと戦場用に開発された化学兵器が、都市や紛争地域で一般市民に使用されるようになったことも近年のテロリズムの特徴である。

化学テロ災害現場では、無数にある中毒起因物質の同定作業は容易でなく、診断までに時間を要することがある。さらに様々な情報が錯綜し、また検体採取の不確実性も同定作業を困難にする要因である。一方、致死性・緊急性の高い化学剤に対しては速やかに治療を開始する必要がある。呼吸筋停止やチアノーゼに対しては支持療法が必要であるし、解毒拮抗薬の投与も考慮される。さらにエイジング(aging)によって神経剤の拮抗薬であるオキシム剤の効果が減弱する時間はサリンで5時間、ソマンで2分間ともいわれている。原因となる薬毒物が判明してから治療を始めるのでは手遅れになることがあり、化学テロの傷病者の初期診療においては、その薬毒物を推定しながら、治療も開始するというアプローチが必要となる。臨床で用いられる5つのトキシドローム以外にも、化学テロに対しては異なったトキドロームが考案されている。

本セッションにおいてはテロ攻撃に適した特性、すなわち揮発性が高く、無力化または致死効果の発現が早い特性を持つ化学薬剤(神経剤、窒息剤、およびオピオイドなど)のトキシドロームについて、およびCテロ対策として東京オリンピック・パラリンピック競技大会2020等で実際に準備されたモデルについて概説する。

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