主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
エピゲノムは細胞運命を決定する重要な仕組みである。一方で、環境要因への曝露により一旦変化が生じると、細胞分裂後も引き継がれるために、がん、精神・神経疾患、2型糖尿病など多くの疾患に関与する。がんに関しては、エピゲノム変化が末梢組織の正常上皮細胞に蓄積して「発がんの素地」を形成することが知られている。我々はこれまでに、エピゲノムのひとつであるDNAメチル化の変化量が将来の発がんリスクと相関すること [Gut, 64:388, 2015; Gut, 66:1751, 2017]、DNAメチル化変化の誘発には慢性炎症が重要であることを明らかにしてきた [J Clin Invest, 130:5370, 2020]。最近、組織微小環境を構成する線維芽細胞や血管内皮細胞においても、慢性炎症・加齢・低酸素などの内的要因によってDNAメチル化変化とヒストンH3K27アセチル化上昇を見出した。また、胃の正常線維芽細胞における一部のH3K27アセチル化上昇が「発がんの素地」形成に関与し、がん細胞の性質を決定していた。これらのことから、内的要因への生体応答が、エピゲノム変化を誘発していることが明らかとなった。そこで現在は、外的要因として慢性的な精神的ストレスに着目し、胃組織のエピゲノム変化と発がんへの影響を解析している。本シンポジウムでは、内的および外的要因によるエピゲノム変化が如何に発がんに影響するかについて紹介する。