主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
近年の医薬品開発は、低分子薬だけではなく様々なモダリティの薬剤が開発されており、中でもLipid Nanoparticle(LNP)は血中での安定性が低い核酸医薬品を目的の臓器へ送達する手段として注目されている。しかしながら、LNPは補体活性化に関連する偽アレルギー反応 (complement activation-related pseudoallergy; CARPA) のリスクが指摘されている。LNPによるCARPA誘導リスクを軽減するため、非臨床安全性試験では動物モデルが用いられるが、種差が課題とされており、ヒト安全性評価への外挿性は低い。一方、ヒトサンプルを用いたLNPによる補体活性化の程度についてもドナー間差が結果に大きく影響しうることが想定された。そこで我々は、より安全性の高いLNPを選択するために複数のヒト血漿を用いた補体活性化評価系の構築を試みた。
まず、約100ドナーの血漿サンプルを用い、LNPに対する補体活性化をC3a及びC5b-9の増加を指標として評価した。その結果、LNP添加によるC3a及びC5b-9の増加の程度にドナー間差が認められた。そこで我々は、ドナー間差が認められた要因を解析するために、いくつかの仮説を基に検討している。例えば、LNPを構成する脂質であるpolyethylene glycol (PEG)に対する抗体に着目する場合、過去の報告では、LNP投与後にCARPA症状のある被験者群において未症状の被験者群と比較してより高濃度の抗PEG IgMが認められ、LNPと抗PEGIgM抗体複合体の形成がCARPA惹起の要因のひとつであることが示唆されている(Kozma et al., Vaccines, 2023)。
本演題では、LNPによる偽アレルギー反応のin vitro評価系構築の現状を紹介し、今後の期待される展望と課題について議論したい。