主催: 日本毒性学会
会議名: 第51回日本毒性学会学術年会
開催日: 2024/07/03 - 2024/07/05
抗体医薬品投与時にみられる副作用として、過剰なサイトカインの放出により引き起こされるサイトカイン放出症候群(CRS)が知られている。発熱や頭痛に加え、頻脈や低血圧、呼吸困難といった重篤な症状が発現することもある。CRSの実例として、2006年に実施されたCD28スーパーアゴニスト抗体TGN1412の臨床試験において、実薬を投与された被験者全員が多臓器不全に陥った事例がよく知られている。このTGN1412の作用はサルを用いた毒性試験では捉えられておらず、動物種差の影響が大きいことが後に明らかになっている。そのため、サイトカイン遊離作用を検出するために、ヒト血球細胞を用いた様々な評価系が検討されてきた。しかし、CRS発症には複数の機序が知られていること、複数のサブクラスやバイスペシフィック化、改変型など抗体医薬品のフォーマットや作用機序が多様化していることから、TGN1412の事故から18年経過した今でも臨床予測性の高い評価系構築には至っていない。
ヒト血球細胞を用いたin vitroサイトカイン放出評価系には複数の手法があり、評価系ごとに特徴が異なることが知られている。現在我々は、改めてそれらの特徴を整理した上で、研究開発中の抗体医薬品のサイトカイン遊離作用ポテンシャルを見落とさない評価系の構築と、抗体医薬品の作用機序に合わせた最適な評価系を選択するためのストラテジー構築を目指し、検討を進めている。
本発表では、複数の既存in vitroサイトカイン放出評価系と、それらの評価系に改良を加えた新たな評価系を用いて、臨床でCRSが問題となったTGN1412を中心に、複数の抗体を評価した結果を紹介する。臨床予測性の向上に向けた評価系選択のストラテジーについて考える機会としたい。