日本毒性学会学術年会
第51回日本毒性学会学術年会
セッションID: W2-5
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ワークショップ2: ヒト試料を用いた医薬品の安全性評価の最前線~臨床副作用の予測性向上を目指 して~
ヒト試料由来の薬物特異的T細胞を用いた獲得免疫型drug-induced liver injury (DILI)メカニズム研究
*臼井 亨
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抄録

キャリアタンパクと結合することで免疫原性を持つ低分子ハプテンとなりうる反応性代謝物の生成を回避する化合物スクリーニングは、多くの製薬会社が採用する一般的なdrug-induced liver injury(DILI)回避戦略の1つである。DILIは、医薬品開発における通常の動物試験では検出できず、臨床試験開始以降に特定のヒトにおいて顕在化することがある。その種差(ヒト特異性)や個人差の克服・解明のために、ヒト試料を用いた多くの研究がなされてきた。DILI発症患者と非患者群において行われたゲノムワイド関連解析(GWAS, Genome-Wide Association Study)においては、ヒト白血球型抗原、HLA(Human Leukocyte Antigen)が1つのリスク因子として同定されている。HLAは免疫システムにおける抗原提示を担う本体でT細胞誘導の拘束因子であることから、この結果は獲得免疫のDILIへの関与を示唆しており、前述の反応性代謝物回避戦略は、ハプテン介在型の獲得免疫反応を間接的に回避していると考えられる。実際、皮膚毒性を発症したヒト試料を用いた研究では、リスクHLAキャリア患者の血液から薬物特異的なT細胞が同定されており、一部の薬剤においては、ハプテンがキャリアタンパクと結合することで薬物特異的T細胞を増殖させることも報告されている。一方、DILIを発症したヒト試料を用いた研究においては、薬物特異的T細胞の関与するメカニズム報告は限定的である。本発表では、複数の抗結核薬を服用するDILI患者もしくは皮膚毒性患者血液を用いた検討において同定されたイソニアジド特異的T細胞の反応を例に、獲得免疫の関与するDILIメカニズム研究について紹介し、その課題について議論したい。

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