東洋音楽研究
Online ISSN : 1884-0272
Print ISSN : 0039-3851
ISSN-L : 0039-3851
一九二〇~三〇年代における大和流ご詠歌の成立過程
新堀 歓乃
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 2008 巻 73 号 p. 63-75

詳細
抄録

ご詠歌は日本に伝わる宗教音楽のひとつであり、主に在家の仏教信者が四国遍路などの巡礼や葬式などの儀礼でご詠歌をうたうほか、稽古事としてもこれを伝習している。本稿は、現在に伝わるご詠歌諸流派の基礎を形作った大和流を対象に、その成立過程を明らかにする. 大和流は一九二一年、山崎千久松によって創始された。千久松はご詠歌の基本となる節を十一に整理し、ご詠歌の普及と仏教信者の教化を図って大和流の伝承団体「大和講」を設立した。大和講はその長である講主と、講主の下でご詠歌を伝承する多くの講員から成るが、千久松は自らが講主となってご詠歌の指導に当たり講員を増やしていった。
こうして大和講が成立すると、ご詠歌の伝承が大きく変容した。第一に、大和講はご詠歌の歌詞と節を記した歌集を全国発売して伝承の統一を図った。第二に、ご詠歌の歌い手が検定試験に合格すると階級が取得できるという制度を置いて、日本の諸芸能に見られるような家元制度と同様の伝承組織を形成した。第三に、詠唱技術を競う全国規模のコンクールを開催するようになった。こうして大和講は、中央の本部が全国各地の支部を統括するという一大組織を築くことができた。
大和講が全国に広く普及することができた要因として最も重要と思われるのが、家元制度と同様の伝承組織を形成したことである。大和講では、一定の階級を取得した者が講主に代わってご詠歌を指導するため、講主自身が直接伝授に当たることなく多くの弟子を抱えることができる。これは家元制度に特徴的なもので、大和講ではこうした制度を備えたために伝承者を増やして一大組織を築くことができたと考えられる。

著者関連情報
© 社団法人 東洋音楽学会
前の記事 次の記事
feedback
Top