東海公衆衛生雑誌
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コロナ禍における薬局での電話または通信機器を利用した遠隔服薬指導の状況
尾関 佳代子尾島 俊之
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2022 年 10 巻 1 号 p. 79-84

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抄録

目的 2019年末から始まった新型コロナウイルス感染症の流行に伴い, 医師の診療, 処方薬の受け取りに関し, 電話または通信機器を利用した新たな対応が取られた。それに伴う薬局でのコロナ禍における遠隔服薬指導の状況を把握することを目的とした。

方法 2020年9月から10月に, 浜松市・湖西市内の全保険薬局を対象として, 調査票を郵送し, 管理薬剤師等に記入を依頼した。調査内容は「遠隔服薬指導を可能とする新型コロナウイルス感染症に関連した0410対応に基づいた処方箋の受付の有無」,「在宅訪問の有無」,「オンライン服薬指導関連事項」等とし, 回答の単純集計を行った。また「オンライン服薬指導の広がりの推測の有無」,「地域薬局営業状況の閲覧可能システムの希望の有無」及び「年齢」と「自薬局でのオンライン服薬指導実施」について, クロス集計及びPearsonのカイ二乗検定を行い, 検討した。

結果 293薬局より回答があった (回収率76.7%)。遠隔指導が可能な0410対応に基づいた処方箋を受付けたことのある薬局は68.9%であったが, 遠隔服薬指導を行った薬局は25.2%で, 全て電話による対応であった。在宅患者の居宅療養管理対象処方箋を受付けたことのある薬局は62.3%であったが, 定期的に在宅訪問を行っている薬局は37.8%であった。自薬局でのオンライン服薬指導実施に関しては, 積極的な薬局が41.5%, 消極的な薬局が58.5%であった。今後のオンライン服薬指導の広がりの推測に関しては, 「広がる」と回答した薬局は49.8%であった。オンライン実施に積極的な薬局は主な理由として「患者の感染リスク減」,「患者の負担減」等の回答が多く, 消極的な薬局は「オンライン対応のためのソフトツールなし」や「指導がうまく伝わっているかが心配である」等の回答が多かった。また「自薬局でのオンライン服薬指導実施に積極的」に有意に関連していたのは「オンライン服薬指導の広がりの推測あり」と「地域薬局の営業状況の閲覧可能システムの希望あり」であった。

結論 オンライン診療後に発行された処方箋を受け取った薬局は約7割とかなり多かったにもかかわらず, 遠隔対応で服薬指導した薬局は4分の1程度に留まり, 患者や家族及び代理人が薬を入手するために薬局まで出向き, 対面による指導を選択していることが考えられた。オンラインを利用する患者が最終的に薬を入手するためには, いくつかのルートが考えられるが, オンライン服薬指導を選択することは, 患者, 薬局双方の背景・状況を鑑み, メリットもデメリットも存在することが明らかとなった。

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