東海公衆衛生雑誌
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新型コロナウイルス感染拡大が日本の医療・介護・福祉の現場にもたらした初期段階の影響に関する質的研究
平野 有希子平川 仁尚江 啓発八谷 寛
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2022 年 10 巻 1 号 p. 85-94

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抄録

目的 新型コロナウイルス (SARS-COV-2) の感染拡大初期に医療・介護・福祉の現場で起きた課題の構造を整理することは, 今後直面する可能性がある新たな新興感染症への対策策定の第一歩として有用と考えられる。本研究では, 2020年4~5月頃の新型コロナウイルス感染拡大の初期段階における地域の医療・介護・福祉の現場の課題とその構造を実務者の言説の質的分析を通して明らかにすることを目的とした。

方法 医療・介護・福祉従事者27名を対象に2020年4月から5月にオンラインインタビュー調査を実施した。インタビューガイドを用いた半構造化インタビューとし, 自由回答形式で行った。録画したインタビュー内容から逐語録を作成し, テキストデータを質的内容分析により分析した。

結果 質的内容分析の結果, 126種類の意味単位が抽出された。グループ化により, (1) 不足する情報・十分でない情報共有に対する不安や不満, (2) 業務ならびに社会からの差別に対する心身の疲労, (3) 孤独と貧困に対する対応, (4) 感染予防対策における困難さ, の4テーマが抽出された。

結論 本研究の結果から, 新興感染症拡大初期の現場で, 医療資材の不足だけでなく信頼性が高い情報の不足が特に深刻であった。また, 初期に限定した課題ではないが, 医療者の心身の疲労軽減, 孤独や貧困に対する生活支援も重要であった。

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© 2022 東海公衆衛生学会
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