東海公衆衛生雑誌
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小学生及び中学生を対象とした教科書における「痩せ」に関連する記載内容について (第2報)
中島 正夫三田 有紀子
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2022 年 10 巻 1 号 p. 95-104

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抄録

目的 若年女性の痩せ志向の改善や不必要・不適切な体重減量行動 (以下「ダイエット」という。) の予防に向け, 2017年3月に告示された学習指導要領等に基づいて作成された小学校及び中学校用「保健」「家庭」等教科書における「痩せ」に関連する記載内容を明らかにし, そのあり方について検討することである。

方法 文部科学省教科書目録 (令和2年4月) に掲載されている2017年に告示された学習指導要領等に基づき作成された小・中学校用「保健」「家庭」等の教科書における, 「適正なボディイメージの形成」や「ダイエットによる健康障害」などの「痩せ」に関連する記載内容を抽出, 旧学習指導要領等に基づいて作成された教科書の記載内容と比較するなどしてそのあり方を検討した。

結果 小学校3・4学年用教科書 (保健5冊) において, 「思春期の体型の変化」「生活習慣と健康」「適正なボディイメージの形成」は全てで記載されていたが, 「ダイエットによる健康障害」について記載されていたのは2冊であった。小学校5・6学年用教科書 (保健5冊・家庭2冊) において, 「生活習慣と健康」以外の記載はなかった。中学校用教科書 (保健体育4冊・家庭分野3冊) において, 「ダイエットによる健康障害」は保健体育全てで, 家庭分野では1冊で記載されていた。また, 「若年女性の痩せ志向」と「適正なボディイメージの形成」はそれぞれ保健体育3冊で記載されていた。なお, 改正された学習指導要領で示された「思考力, 判断力, 表現力等」などに関連し, 課題として「痩せ」を明確に取り上げた教科書はなかった。

結論 若年女性の痩せがわが国の重要な健康課題となっているにも拘わらず, 学習指導要領・学習指導要領解説での「痩せ」に関連する記載内容は変更されない中, 小学生及び中学生を対象とした新しい教科書での「痩せ」に関する記載内容は原則拡充されておらず, むしろ一部簡略化されていた。特に小学校5・6学年用教科書では「痩せ」について明確な記載はなかったこと, また中学校学習指導要領では「生活習慣病などの予防」は第2学年で取り扱うとされていることから, 思春期の始まりの時期に「痩せ」に関する健康教育が十分行われない可能性がある。今後文部科学省が特に小学生を対象とした教科書での「痩せ」に関連する記載が拡充されるための措置を講じることなどが強く望まれる。

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