2023 年 11 巻 1 号 p. 87-95
目的 コロナ禍を経験して遠隔医療の普及が進んでいる。高齢者は若年層に比較してテクノロジーへのアクセスや使用経験の不足が憂慮されるが,オンラインの活用により多くの高齢者が適切な医療を享受することが可能となり得ることが考えられる。本研究は高齢患者のオンライン活用の現状を調査し,オンライン服薬指導の利用促進の要因を検討することを目的とした。
方法 浜松市の薬局8店舗において,70歳以上の高齢者184名についてアンケート調査を実施し,回答の集計を行った。また,「性別」,「年齢」,「インターネットに繋がる機器使用の有無」,「オンライン説明会開催希望の有無」と「オンライン服薬指導」との関連についてクロス集計を行った。さらに,患者住所の町名の代表ポイントから薬局までの道のりをArcGISを用いて算出し,「患者自宅から薬局までの距離」を説明変数,「オンライン服薬指導の希望」を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った。
結果 年齢は平均77.2歳,性別は男性42.9%,女性57.1%であった。インターネットに繋がる機器を使用している人は59.8%であったが,その約半数は家族等の身近な人の手助けを必要としていた。現在機器を使用していない人の今後の使用希望は15.1%と少なく,使用方法が分からないためという理由が最も多かったが,使用方法を教えてもらえれば,使用したい人も一定程度いた。オンライン服薬指導の希望は約2割で,半数が対面希望,どちらでもよい人が約4分の1であった。クロス集計の結果ではオンライン服薬指導の希望は「男性」,「年齢80歳未満」,「機器使用のある人」,「オンライン説明会の開催を希望している人」で高かった。また「患者自宅から薬局までの距離」を説明変数,「オンライン服薬指導希望」を目的変数として行ったロジスティック回帰分析の結果,徒歩15分相当以上の距離の患者のオッズ比は2.99(95%信頼区間1.34-7.19)であり調整を行っても有意にオンライン使用希望が高かった。
結論 高齢者がオンライン使用意欲を持つことや使用方法が分からなくなった時等に機器に精通している人に気軽に聞けることなどがオンラインツールやインターネットに繋がる機器の利用促進には重要であると考えられ,そのような状況への動きにより,オンライン服薬指導が促進される可能性が示唆された。自宅から薬局までの距離もオンライン服薬指導の使用に影響を及ぼすことが考えられた。