東海公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2434-0421
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11 巻, 1 号
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  • 和泉 邦彦, 高橋 昌, 中込 悠, 尾関 佳代子
    2023 年 11 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 2019年に出現した新型コロナウイルス感染症は,感染状況の変化,変異株の出現等に対し,政府による緊急事態宣言等,3密を避ける対策が行われてきたが,きめ細かい対策は各自治体に委ねられている。新潟県では,第5波における感染拡大時,自宅療養者のトリアージを電子的に実施することを目標に新潟大学医学部災害医療教育センターのDisaster Medical Assistance Team (DMAT)が介入し,自宅療養者が自ら健康状態を入力できる独自のオンラインシステムを構築し,新たな業務体制 (新体制) を導入した。本研究では,今後起こり得るパンデミックにおける療養支援体制の構築と評価に関するモデルを示すことを視野に,新体制導入による業務負担及び療養状況の変化に関する検討を行うことを目的とした。

    方法 新潟県において,2021年7~9月にかけての新型コロナウイルス感染症拡大 (第5波) の襲来時,DMATの介入により,自宅療養者自身によるオンライン入力に基づいた独自の健康管理体制 (新体制) を導入した。新体制導入後の自宅療養者への1日ごとの架電件数の調査,及び,導入前後でのオンライン診療紹介件数,入院件数,入院までの療養日数,入院期間の比較を行った。

    結果 担当者の負担となっていた健康観察のための架電件数の新体制導入後の推移について,新体制導入がなければ平均273.9件/日,最大672件/日となっていたところ,導入により平均131.1件/日,最大296件/日に抑えられた。また,入院期間は約2日間(導入前12.0日,導入後10.6日)有意に短縮したが,オンライン診療紹介件数,入院件数,入院までの療養日数は有意差を認めなかった。

    結論 オンラインシステムの導入により架電件数が抑えられ,担当者の負担軽減が図られた。また入院件数等は新体制導入前後で有意差が認められず,入院期間は短縮されたことから,新体制で行うトリアージは,療養状況を悪化させることなく業務負担を軽減したと考えられた。また,今回導入したオンラインシステムは,将来起こり得るパンデミックにおいても,トリアージの質を担保しながら,療養状況に関する調査を簡潔に行うことが可能なシステムとして,今後に活かし得る可能性が示唆された。

  • 小嶋 雅代, 上地 香杜, 安岡 実佳子, 渡邉 良太, 木村 智恵子
    2023 年 11 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 フレイルとは,加齢により心身の活力が低下した状態を意味し,介護が必要となる前段階と定義される。新型コロナウイルス感染症の流行により,多くの地域在住高齢者は他者との交流の機会の喪失や身体的な活動量の低下を余儀なくされ,急速にフレイルに陥る危険性が高まった。そこで,地域住民主体の介護予防活動グループ(通いの場)拠点とし,高齢者がグループのつながりを保ちつつ,自宅で単独で行えるフレイル予防のための運動プログラムの開発を行った。プログラムの開発過程では,現場の実情・ニーズを把握し,プログラムの実施可能性への示唆を得ることを目的として,フォーカスグループ(FG)を実施した。

    方法 国立長寿医療研究センターが開発したフレイル予防のための啓発冊子,「在宅活動ガイド」に収載されたメニューを用いて,Ask(評価),Advise(助言),Agree(合意),Assist(支援),Arrange(手配)の5つの段階から構成された5Aアプローチに基づくプログラム案を作成した。次に「通いの場」のボランティアスタッフにプログラム案を説明し,実施可能性についてFGを行った。話し合われた内容をテキスト化して分析し,理論記述を行った。プログラム案は再度ボランティアスタッフ,保健師,研究者で検討し,最終的に確定した。

    活動内容 FGの結果,運動プログラムの促進要因として,日常生活に取り込むことができること,専門家の勧めがあること,自分だけではなく周囲の人とのかかわりがあることが挙げられた。また,プログラムの実施可能性を高めるものとして,やるべきことを明確にすることと,「認める・褒める」体制の重要性が確認された。さらに,ボランティアスタッフが通いの場参加者との自然なつながりを重視していることが明らかとなった。以上をふまえ,高齢者が目標設定と記録表の作成を行って運動状況を可視化し,ボランティアスタッフが参加者の行動を確認,承認し,肯定的にサポートする仕組みとした。

    結論 FGにより,現場の実情・ニーズを把握し,実施可能性を高める工夫を加えたフレイル予防プログラムが完成した。

  • ‐横断研究より‐
    野口 有紀, 藤田 美枝子, 種村 崇, 竹内 研時, 吉田 直樹
    2023 年 11 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 本研究の目的は,高齢者における緑茶摂取と口腔健康状態との関連を検証することである。

    方法 2021年3~5月に65~89歳の高齢者1,500名を住民基本台帳より人口比に合わせ無作為抽出し,郵送法による自己記入式質問紙調査を実施した。有効回答者数は817名(54.5%)であった。欠損値を除いた695名を対象にχ2検定を実施後,主観的な口腔健康状態(よい,よくない)を目的変数,1日の緑茶摂取量を説明変数,その他の調査項目を調整変数としたロジスティック回帰分析を実施した。

    結果 対象者の平均年齢は73.7±6.3歳であった。主観的な口腔健康状態のよい者59.3%,よくない者40.7%であった。1日の緑茶摂取量は3杯以下42.9%,4杯以上57.1%であった。ロジスティック回帰分析の結果,1日の緑茶摂取量が4杯以上の者に比べ3杯以下の者は,主観的な口腔健康状態がよくないオッズが1.62[95%CI:1.15-2.27]倍と,有意に高かった。

    結論 高齢者において1日の緑茶摂取量が増加すると,口腔健康を良好に保つ可能性が示唆された。

  • 服部 哲也, 石井 洋, 鈴木 幸男, 横田 正, 齋藤 寛
    2023 年 11 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 海苔の養殖が行われている愛知県三河地域で食について学修している大学生と調理従事者を対象に実施した海苔についてのアンケート結果を解析し,地域食材である海苔に対する消費意識と健康意識,海苔の利用価値の向上につながる要素を検討することを目的とした。

    方法 愛知県三河地域在住のA短期大学家政系学科の大学生およびB社の調理従事者にGoogleフォームを利用したウェブアンケートを実施した。2006年に農林水産省より実施,報告された「のりの消費動向について」と比較するとともに,所属間および年代別での回答割合をFisherの正確確率検定により検討した。また,海苔の健康効果についての自由記述をテキストマイニング分析することにより全体を要約し,その傾向を把握した。

    結果 2006年の農林水産省の結果と比較し,「味」とともに「パリパリとした食感」も海苔のPRポイントになり得ることが示された。また,海苔の嗜好性について,全体では好意的な意見が高い割合を示した。一方,若い世代では海苔への意識が変化していることが示され,A短期大学の大学生では一番身近な海苔を「韓国海苔」と答える割合が高く,韓国文化が身近になるにつれ,国産海苔への意識に変化がみられる結果となった。海苔の健康効果や含有量の多い葉酸については,所属間および年代別において認知度に違いがみられた。

    結論 時代の変化による消費者ニーズに応じた海苔の加工や葉酸などの栄養的魅力を情報発信することで,海苔に対する健康意識とともに海苔の価値感を高める必要がある。

  • 山脇 功次, 後藤 あや, 齋藤 麻友佳, 津富 宏
    2023 年 11 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 育児支援プログラムであるNobody’s Perfect(ノーバディーズ・パーフェクト:NPプログラム)による参加前の母親の悩みと参加後の気持ちの変化の対応を明らかにすることを目的とした。

    方法 静岡市内のNPO法人place of peaceにて実施されたNPプログラムに,2013年9〜10月(並行して2回開催),2015年6〜7月,2015年10〜11月,2016年1〜2月,2018年6〜7月,2019年1〜2月,2019年2〜3月,2019年9〜10月に参加した母親を対象とした。プログラム参加前と参加後の自由回答を,KH Coderを用いてテキストマイニングを行った。定量的分析として,自由回答をコーデイングし,単純集計を行った。「NPプログラム参加前の日常生活と子育ての悩み」の各コードと「NPプログラム参加後の母親の変化」の各コードの関連についてχ2検定を行った。

    結果 対象者は93人であった。「NPプログラム参加前の日常生活と子育ての悩み」については,「母親の心身の調子」に悩みがある者が69人(74.2%),「NPプログラム参加後の母親の変化」については,「感情のコントロール」に変化がある者が37人(39.8%)と最も多かった。「NPプログラム参加前の日常生活と子育ての悩み」の各コードの該当の有無と「NPプログラム参加後の母親の変化」の各コードの該当の有無の比較では,「子育ての仕方・方法」に悩みがある場合は,プログラム参加後に「家族への想いの伝え方」に変化が観察された(p=0.037)。また,「子どもとのコミュニケーション」に悩みがある場合は,プログラム後に「物事に対する客観的な視点」に変化が観察され(p=0.002),「夫・親族からのサポート不足」に悩みがある場合は,「参加者同士の話し合いによるポジティブな考え方」(p=0.01)および「安心感・孤独感の軽減」(p=0.012)の変化が観察された。

    結論 NPプログラムの参加前に子育ての仕方や方法で悩む母親は,NPプログラムを通して育児方針や育児負担について,夫や家族と相談するようになり,参加前に子どもとのコミュニケーションで悩んでいた母親は,子どもとの関わりを客観的に評価できるようになった可能性が示唆された。また,母親同士がつながることで,参加者同士の情緒的サポートが母親のポジティブな考え方や孤独感の軽減に関わった可能性が示唆された。

  • 尾関 佳代子, 尾島 俊之
    2023 年 11 巻 1 号 p. 87-95
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 コロナ禍を経験して遠隔医療の普及が進んでいる。高齢者は若年層に比較してテクノロジーへのアクセスや使用経験の不足が憂慮されるが,オンラインの活用により多くの高齢者が適切な医療を享受することが可能となり得ることが考えられる。本研究は高齢患者のオンライン活用の現状を調査し,オンライン服薬指導の利用促進の要因を検討することを目的とした。

    方法 浜松市の薬局8店舗において,70歳以上の高齢者184名についてアンケート調査を実施し,回答の集計を行った。また,「性別」,「年齢」,「インターネットに繋がる機器使用の有無」,「オンライン説明会開催希望の有無」と「オンライン服薬指導」との関連についてクロス集計を行った。さらに,患者住所の町名の代表ポイントから薬局までの道のりをArcGISを用いて算出し,「患者自宅から薬局までの距離」を説明変数,「オンライン服薬指導の希望」を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った。

    結果 年齢は平均77.2歳,性別は男性42.9%,女性57.1%であった。インターネットに繋がる機器を使用している人は59.8%であったが,その約半数は家族等の身近な人の手助けを必要としていた。現在機器を使用していない人の今後の使用希望は15.1%と少なく,使用方法が分からないためという理由が最も多かったが,使用方法を教えてもらえれば,使用したい人も一定程度いた。オンライン服薬指導の希望は約2割で,半数が対面希望,どちらでもよい人が約4分の1であった。クロス集計の結果ではオンライン服薬指導の希望は「男性」,「年齢80歳未満」,「機器使用のある人」,「オンライン説明会の開催を希望している人」で高かった。また「患者自宅から薬局までの距離」を説明変数,「オンライン服薬指導希望」を目的変数として行ったロジスティック回帰分析の結果,徒歩15分相当以上の距離の患者のオッズ比は2.99(95%信頼区間1.34-7.19)であり調整を行っても有意にオンライン使用希望が高かった。

    結論 高齢者がオンライン使用意欲を持つことや使用方法が分からなくなった時等に機器に精通している人に気軽に聞けることなどがオンラインツールやインターネットに繋がる機器の利用促進には重要であると考えられ,そのような状況への動きにより,オンライン服薬指導が促進される可能性が示唆された。自宅から薬局までの距離もオンライン服薬指導の使用に影響を及ぼすことが考えられた。

  • 井成 真由子, 竹内 日登美, 原田 哲夫, 川俣 美砂子, 黒谷 万美子, 中出 美代
    2023 年 11 巻 1 号 p. 96-102
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 3〜5歳の子どもを持つ母親を対象に,母親の就業形態や睡眠問題,普段の子育ての中で感じる育児ストレスの関係について明らかにすることを目的とした。

    方法 2019年6月7日〜11日に,社会調査会社 (A社) の登録モニターから,3〜5歳の同居の子どもを持つ20〜49歳の母親を対象として,インターネットによるアンケート調査を実施し,1,601名から調査内容に欠損のない回答が得られた。調査内容は,就業形態,社会経済的地位 (SES),睡眠習慣・概日タイプ度,育児での困りごとなどである。産休・育休や休職中を除く1,529名を解析対象とし,統計解析には,χ2検定,Kruskal–Wallis test,Mann–Whitney U testを用いた。

    結果 母親の就業形態は,常勤が19.8%,パートタイムが23.2%,フリー (在宅ワークを含む) が2.6%であった。就業形態による就寝時刻の差異は認められなかったが,常勤の母親は,他の就業形態の母親と比較して起床時刻 (平日) が10分以上早く,睡眠時間 (平日) に関しても20分以上短かった (p < 0.001)。概日タイプ度では,起床関連得点のみ常勤の母親で有意に高く,子どもの合計得点では専業主婦の子どもの方が有意に高い値を示した (p < 0.001)。平日と休日の睡眠中央時刻のずれを示すソーシャルジェットラグ (SJL) との関連では,専業主婦と比較して常勤およびパートタイム・フリーの方が,また,朝型と比較して中間型・夜型の母親の方が,SJLが大きかった (p < 0.001)。高卒以下の母親の方がSJLは大きく,SESとの関連もみられた。朝食習慣では,親子とも朝食時刻が不規則な方が,毎日定時に摂取している者よりもSJLが大きかった。子どもが「朝起きない」「寝付かない」などにストレスや不安を感じる程度が「非常に・かなり感じる」母親は,そうでない者と比較してSJLが有意に大きい値を示した。

    結論 常勤の母親は,起床時刻が早かっただけでなく睡眠時間も短かったため,慢性的な睡眠不足による影響が懸念された。保護者の夜型化やSJLの拡大は,子どもの食習慣や生活リズムの乱れに直結し,子育ての困りごとを増やすと考えられた。また,学歴とSJLとの関連も見られたことから,今後,就業時間や身近なソーシャルサポートの有無といった点などからも検討する必要があると思われた。SJL低減や育児ストレス軽減のためには,保護者自身の睡眠衛生や生活管理に対する意識の向上と,生活改善も含めた睡眠衛生指導が必要であることが示された。

  • 岡本 名珠子, 阿部 誠人, 田中 千絵, 小林 和成, 纐纈 朋弥
    2023 年 11 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 本研究の目的は,一地域在住高齢者を対象として,健康・生活調査を実施し,新型コロナウイルス感染症(以下,Covid-19)流行下における生活実態と社会的活動の変化を性別ごとに検討することである。

    方法 A県a地区32自治会の65歳以上高齢者3,525名を対象に,2022年1月,無記名自記式質問紙調査を実施。調査項目は,基本属性,要介護・要支援認定の有無(以下,要介護認定),1日の座位・臥床時間,後期高齢者の質問票項目(以下,高齢者質問票),Covid-19流行前後の活動量の変化と活動内容の合計35項目とした。各調査項目を男女別に,連続変数にはMann-Whitney's U-test,カテゴリー変数にはPearson χ2-testにて評価した(統計学的有意水準両側5%)。

    結果 有効回答数(率)1,721名(48.8%),研究対象者の8割以上が要介護認定を受けておらず,高齢者質問票項目「1.あなたの現在の健康状態はいかがですか(以下,主観的健康観)」において「よい・まあよい・ふつう」と回答したのは男性680名(84.0%),女性716名(80.4%)であった。男女間で有意差が認められたのは,「2.毎日の生活に満足していますか(以下,生活満足度) (p=.045)」で男性が有意に多い一方で,「12.たばこを吸いますか(p<.001)」他2項目は,女性が有意に多かった。活動量の変化について,男性602名(75.2%),女性719名(81.9%)が「とても・どちらかといえば減った」と回答し,女性が有意に多かった(p=.001)。最も減少した活動内容は,男性は「友人や別居家族らと会う回数(以下,対面交流)」,女性は「誰かと食事をする回数(以下,共食)」であった。有意差が認められた活動は,「対面交流」他4項目で,いずれも女性が有意に多かった。

    結論 男性7割以上,女性8割以上が,Covid-19流行前後で活動量が低下した。減少した活動内容は,対面交流,共食,旅行,女性は買い物であった。男女ともに8割以上が要介護認定なし,主観的健康観が良好であるものの,フレイルに関連ある項目で約1〜3割の良好側でない回答があった。生活満足度は女性が有意に低く,さらに対面交流等の機会は女性が有意に多く減少した。高齢者の活動,交流が可能なコミュニティの再構築,家庭訪問等の支援体制整備が重要である。

  • 多次 淳一郎, 脇坂 浩, 春名 誠美, 北井 真紀子
    2023 年 11 巻 1 号 p. 111-118
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 A県内の訪問看護ステーション(以下,ST)における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性・濃厚接触者への訪問時の感染予防策の遵守状況とそれが困難な要因を明らかにすること。

    方法 A県内に所在するST 185施設に34項目からなる無記名自記式質問紙調査を実施した。郵送法とWeb法を併用し回答を収集した。調査期間は2022年4月~5月。

    結果 書類未着で返戻された2施設を除く183施設のうち,72施設から回答を得た(有効回答率:39.3%)。COVID-19陽性・濃厚接触者の訪問実績があるSTは29施設であり,実績のない43施設のうち8施設は訪問要請を受けたが対応していなかった。訪問実績のある29施設のCOVID-19自宅療養者対応マニュアルに示された感染予防策23項目について,全施設が100%遵守できている項目はフェイスシールドの着用等の2項目であった。遵守率が100%と回答したSTの割合が低かった項目は,訪問中の送風,15分以内の訪問時間等の5項目であった。

    結論 平時から自施設単独では対応が困難な感染対策上の課題について,地域内のステーションや他の介護サービス事業所,医療機関等が協力して取り組んでいくことが必要と考えられた。

  • 伊藤 純子, 高橋 佐和子
    2023 年 11 巻 1 号 p. 119-126
    発行日: 2023/07/08
    公開日: 2023/07/08
    ジャーナル フリー

    目的 ニュータウンとは,高度経済成長期より開発されてきた住宅地である。近年,人為的な造成と一斉入居に起因する地域課題が,造成から長期間を経た地区を中心に顕在化している。住民の健康づくりにおいてどのような影響があるのか,地区保健師の視点からニュータウンの地区特性を考察する。

    方法 東海4県から4地区の調査対象地区を選定し,地区を管轄する市町の保健センター及び地域包括支援センターの保健師6名を研究協力者として,半構造化インタビューによりデータを収集した。得られたデータより逐語録を作成し,質的記述的分析によりカテゴリーを抽出してそれぞれの意味解釈を検討した。

    結果 175コードから,40下位カテゴリー,19中位カテゴリー,6上位カテゴリーが抽出された。上位カテゴリーとして,一斉に起こる少子高齢化の進行と子世代との同居の難しさ,高齢独居男性ケース増加とアルコール依存傾向,特定健診の受診率及び生活習慣が旧地区と異なる,災害時の被害拡大の可能性,地区組織活動における特定の住民への負担集中と合意形成の難しさ,ニュータウンに対応した公衆衛生活動の展開方法の模索,が抽出された。

    結論 ニュータウンは旧地区と比較し健康課題がより顕著である点に特徴がある。社会経済的地位やライフスタイルが似ている住民の集積や,類似した建造環境により特徴付けられるニュータウンは,健康課題のリスクと地域づくりにおける強みの両側面を有していると考えられる。

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