東海公衆衛生雑誌
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エコチル調査愛知ユニットセンターにおける13歳以降調査継続に向けての取り組みと再同意者の特徴
湊 京子中根 昇吾伊藤 由起加藤 沙耶香杉浦 真弓齋藤 伸治上島 通浩
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2025 年 12 巻 2 号 p. 87-94

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抄録

目的 前向きコホート研究において,長期に渡るコホートの維持は研究の成否にかかわる最重要課題の1つである。一方,出生コホート研究において,参加者維持のための創意工夫に基づいた現場の絶え間ない努力に関しての記述は非常に乏しいのが現状である。我々は環境省による国家プロジェクト「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の15拠点の1つである愛知ユニットセンター(UC)を2010年度から運営している。エコチル調査の開始当初の基本計画では胎児期から13歳に達するまでの追跡を想定しており,13歳以降の調査継続については,その時点の研究成果やフォローアップ率などを勘案して判断するとされていた。2021年度の有識者検討会では,高い追跡率と高い質問票回収率等により13歳以降も調査を展開することが必要であるとされ,調査継続のために再同意取得が必要となった。本研究では我々が再同意取得のために行った取り組み内容とその効果について記述し,13歳以降調査に向けたさらなる再同意率向上のための考察を行うことを目的とした。

方法 2023年度から再同意取得のため,ニュースレター, チラシ,ショートメッセージや電話での再同意勧奨などに加え,小学6年生を対象とした対面調査(学童期検査)を13歳以降調査継続の周知と再同意取得の重要な機会と位置付け,学童期検査参加の勧奨も積極的に行った。

結果 2023年度対象者778名のうち13歳継続の再同意者518名(66.6%),不同意64名(8.2%),未反応者196名(25.2%)であった(2024年5/8現在)。再同意者は子どもの就学後の質問票提出率が高く,学童期検査への参加率が高かった。未反応者に対する電話勧奨の効果は高く,75名のうち13歳以降調査の継続同意の意向を示した者は50名(手続き済み34名)であった。不同意者,未反応者においては,多忙であることに加え,専用アプリインストールを伴う再同意手続きやウェブ形式での質問票回答に対しての苦手意識や不安感が多数見受けられた。

結論 学童期検査への参加を促し対面でコミュニケーションを行うことは13歳以降調査継続には有効と考える。また,電話による再同意手続きの勧奨はコホート維持率が低くなるとの報告もあるが,今回の結果では効果的であった。今後のコホート維持においても,参加者とのコミュニケーションを積極的に推進し,ウェブ形式質問票調査のデジタル・ディバイド(情報格差)の影響を受ける参加者の負担感を軽減する戦略が必要と考える。

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