東海公衆衛生雑誌
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A県内の地域包括支援センターにおける支援困難事例対応の「困難さ」と「不得意感」に関する実態調査
石上 早苗鈴木 知代豊島 由樹子黒野 智子式守 晴子
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2025 年 12 巻 2 号 p. 95-103

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抄録

目的 地域包括支援センターの職員(以下,センター職員とする)が抱える支援困難事例の対応経験の有無と困難さ及び支援の不得意感の実態,あわせて困難さ・不得意感と経験年数の関連を明らかにすることを目的とした。

方法 A県内に設置されている地域包括支援センター(66箇所)に在籍している専門職(448通)を対象に郵送法による自記式質問紙調査を実施した。調査項目は, 日頃センター職員が相談支援業務を行う中で,支援が困難だと感じる「困難対応の経験の有無」,「困難さのレベル」及びセンター職員として行う支援業務の「不得意感」について回答を得た。またセンター職員の経験年数を従属変数,「困難さ」と「不得意感」の回答を2群に分け,各項目を独立変数としカイ二乗検定をおこなった。分析は, 解析ソフトIBM SPSS Statistics Ver22.0を使用し,統計学的有意水準は5%(両側)とした。

結果 本研究の調査期間は2021年1月5日から1月29日,回答数は206名(回収率:45.9%)であった。このうち回答に欠損のあった6名を除外し200名(有効回答率:44.6%)を分析対象とした。センター職員の8割以上の者が対応経験のある項目は, 【Ⅰ.事例側の要因】として,経済的困窮, 病識欠如, 服薬の不備,整理整頓不能,キーパーソン不在など,【Ⅱ.家族等の支援者側の要因】として, 家族内の複数問題,家族の病識・状況欠如,家族(支援)力の脆弱性,家族の疲労・疲弊などで,これらの「困難さ」とセンター職員の経験年数には有意差が認められた。またセンター業務の不得意感と経験年数では,汚れた(ゴミ屋敷)環境の相談,医療的な処置を要する患者対応, チームアプローチなどで有意差がみられた。

結論 困難事例の「困難さ」や「不得意感」は,経験年数と関連があり,困難事例の対応は,経験の積み重ねに基づく支援技術の向上によって「困難さ」や「不得意感」を減少させていく可能性があることが示唆された。

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