2017 年 5 巻 1 号 p. 111-120
目的 名古屋市及びその周辺地域の食文化の一つである喫茶店のモーニングサービス(以下,MS)を勤労者はどのように利用しているのか,利用にあたって期待していることは何かを記述し,勤労者の「健康な食事」実践に係る食環境づくりを検討するための一資料とする。
方法 2010年1月,愛知県K市役所全職員966名に対し,健康とMSを含む食生活に関する質問紙調査を行った。同意が得られた878名のうち,MS利用の有無に関する質問に回答があった837名(男性246名,女性591名)について解析を行った。
結果 調査時の前1年間,MSを定期的に利用している者(定期的利用群)は男性6.5%,女性5.1%,利用することはあるが,定期的に利用しているわけではない者(不定期利用群)は男性52.8%,女性52.1%,利用していない者(非利用群)は男性40.7%,女性42.8%だった。定期的利用群と不定期利用群では男女共にMSで主食,主菜,副菜がそろったメニューを食べている者が50%を超え,「家族」と利用する者の割合が最も高かった。その上,男性では「職場の仲間」「ひとり」で利用することがある者も少なくなかった。女性では「友人・隣人」と利用することがある者が多かった。MS利用の期待について,男女共に,食事づくりの効率・経済性を期待する「食事を作らなくてよい,料理しなくてよい,後片付けしなくてよい」を選択した者が多かった。加えて男性では,家庭的な雰囲気を期待する「新聞,雑誌などを読む,またはテレビなどを観ることができる」,自由な時間を期待する「時間をつぶすことができる」が多かった。女性では,コミュニケーションを期待する「友人など人と会うことができる」,安らぎを期待する「くつろぐことができる」が多かった。女性の非利用者でMSに関心のある者は,MS利用の期待が大きかった。
結論 地域に根づいているMSを「健康な食事」の実践ができる身近な場として活用していくためには,現在利用している人々の期待に応えることに加えて,女性非利用者の期待に応えていくことが重要と考えられた。