2017 年 5 巻 1 号 p. 137-143
目的 分散居住地域の在日コリアン高齢者における、社会との結びつきと抑うつ傾向の関連を明らかにした。
方法 東海地区に居住する在日コリアンで、研究参加の同意を得られた65歳以上の高齢者134名を対象とした。調査方法は、識字の問題がある場合でも対応が可能な個別訪問調査法とした。調査項目は、Geriatric Depression Scale 5(GDS-5)、基本的属性(性別、出生地、年齢、世帯構成、婚姻状況、治療中の疾患)、家族・親戚・友人との面会頻度や電話等での交流頻度、趣味を楽しむ頻度、外出頻度、近所つきあいの程度とした。GDS-5が2点以上を抑うつ傾向ありとして、上記項目と抑うつ傾向との関連を示しオッズ比と95%信頼区間を推定した。さらに、ロジスティック回帰分析を用いて、年齢、性別、出生地、治療中の疾患、婚姻状況を調整した調整オッズ比を推定した。
結果 GDS-5による抑うつ傾向者が47.8%にみられた。抑うつ傾向者は、朝鮮半島で生まれ日本に移民した在日コリアン1世高齢者(65.6%)が、日本で生まれた在日コリアン2世高齢者(42.0%)に比較して有意に高かった(p=0.025)。年齢、性別、出生地、治療中の疾患と婚姻状況にかかわらず家族親戚と電話などの間接的なやり取りをする頻度(傾向性 p<0.01)、友人と直接会う頻度(傾向性 p<0.01)、友人と電話など間接的なやり取りをする頻度(傾向性p=0.07)、外出頻度(傾向性 p<0.01)、趣味を楽しむ機会(傾向性 p=0.02)が少ない群ほど抑うつ傾向の割合が有意に高くなる傾向がみられた。
結論 在日コリアン高齢者の精神的健康の保持増進のためには、在日コリアン高齢者が家族友人と交流を持つ機会を作ることや高齢者が近隣で社会活動を確保できる場所づくりが必要であることが示唆された。