少子高齢化が進展する中,我が国は団塊の世代の大量退職による労働力不足と技術の継承の懸念といういわゆる「2007年問題」に直面している.本稿は,こうした状況下において,運輸事業者における人材確保と技術の継承に対する認識と取り組みについて,全般的な状況と分野ごとの状況を概観するとともに,航空整備分野,鉄道分野,バス分野の事業者のアンケート調査とヒアリング調査を行い,現況をまとめたものである.その中で,分野により若干の差はあるものの各事業者とも労働力確保と技術の継承に関する問題を認識し,問題の回避に向けた対策を行っているという結果を示している.続いて,各分野を比較することで,分野を通じた課題を抽出している.そして,この結果を踏まえ,事業者の進めるべき施策や行政の方向性の足掛かりを示している.
電車の混雑に対し,増発などの運行サービスの増強は費用が嵩むことなどから早急な進展は望めない.そこで,電車ごとの混雑の偏りを是正することで,利用者にとって少しでも快適な電車での移動を実現し,また混雑の平準化により定時運行を支援できる可能性がある.本研究では,高知県の土佐電氣鐵道において,つぎつぎに電停に到着する路面電車の混雑情報(以下「混空情報」と記す)を表示する情報板を設置し,リアルタイムで混雑状況を利用者に情報提供する社会実験を行った.混空情報の提供にあわせて利用者の乗車行動に関する調査とアンケート調査を行い,利用者の乗車選択意識と行動の変化を把握することで混空情報提供の有用性を検証した.