2009 年 11 巻 4 号 p. 047-053
本研究は,公共交通機関を利用した通勤が労働者に与える肉体的・精神的な移動負荷(以下,「通勤ストレス」)を定量的に計測する手法について検討を行ったものである.具体的には,生体の自律神経の活動状態を示す指標である心拍変動データを活用し,①一定時間/区間の乗車によって生体が被る通勤ストレスの平均的な強度,②一定時間/区間の乗車を通じて被る通勤ストレスの総量,をそれぞれ定量的に計測する手法を提示し,その有用性を確認した.また,首都圏の主要な通勤路線を対象として上記指標を用いた分析を実施し,急行乗車と各停乗車の各々の場合について,通勤ストレスの負荷レベルや時間的推移の相違に関する基礎的な考察を行った.