抄録
EU域内の共通航空政策は,世界でもっとも自由化の進んだ航空政策であるといっても過言ではない.この背景には,大西洋路線という世界屈指の国際航空市場の相手国であり,航空自由化を強力に推進する米国の存在が大きかったことは容易に想像できよう.しかしながら,EUと米国とで大きく異なるのは,EUは政治的・経済的スタンスの異なる国々から構成されていることである.EU各国の航空当局や欧州委員会がそれぞれの立場の違いを乗り越え,いかに最終的な共通航空政策であるパッケージⅢの合意まで至ったのか,本書は国際政治学の視点からそれらを克明に明らかにしている.