2004 年 7 巻 2 号 p. 037-049
本論文では,1990年代における保守党政権時代を中心に,同年代後半の労働党政権と対比させながら,ロンドン及びイングランド地方圏の地域交通行政の仕組みや取組みについて,①行政の機能・地域的分化の度合(Fragmentation),②行政の中央集権化の度合(Centralisation),③市場原理の導入等を通じた行政の関与限定・縮小の度合(Privatisation)という3つの軸を切り口として,その特徴や議論を整理した.これにより,ロンドン,イングランド地方圏ともに,地域的あるいは機能的な細分化は,民営化の進展とあいまって,政府によるコントロールを強めることになる一方,関与主体が多数化する中,パートナーシップなどの民間との連携の枠組みが活用されたことが明らかとなった.90年代を通じた地方自治体構造改革等を経た英国での経験・議論は,我が国の今後の地域交通政策の展開に示唆を与えるものである.