運輸政策研究
Online ISSN : 2433-7366
Print ISSN : 1344-3348
7 巻, 2 号
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研究
  • 加藤 浩徳, 小野田 惠一, 家田 仁
    2004 年 7 巻 2 号 p. 002-009
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    各種交通需要推計においては,MNLモデル等のランダム効用をベースとする離散選択行動分析がよく適用される.だが,ここでは,いかなる極小の交通サービスの変化に対しても人間行動が変化するという仮定が置かれており,現実と必ずしも合致しない可能性がある.そこで,本研究では,東京圏の都市鉄道経路選択行動を対象に,交通サービス水準の閾値を計測し,それが需要予測に与える影響について分析を行ってみた.その結果,2つの異なるサービスを無差別と判断して行動する効用差(MPD)は,乗車時間換算で約76秒との結果が得られた.また,現実の改良プロジェクトを対象にモデルを適用し,MPDを考慮する時としない時の需要推計結果の違いについて考察した.その結果,MPDの考慮の有無により,推計される需要は1~2%しか変化せず,実務的な観点からは閾(最小知覚差)を考慮する必要性は低いことが確認された.

  • -運賃共通化の検討を中心として-
    金子 雄一郎
    2004 年 7 巻 2 号 p. 010-019
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,大都市圏の鉄道運賃を対象に事業者別の運賃制度がもたらす問題を取り上げ,その改善方策を検討するものである.具体的には,鉄道ネットワークが高密化しているエリアにおいて顕著化している,異なる鉄道事業者を乗継ぐ際に運賃が割高となる問題や,同一ODの経路間で運賃格差が生じるため需要が効率的に配分されない問題などを改善するための方策として,事業者毎の運賃体系および運賃水準を同一にする運賃共通化を取り上げ,その特徴や実施上の課題を整理した.そして,東京圏の2つのエリアを対象にシミュレーションを行い利用者および事業者への影響を分析した結果,利用者便益と事業者収入はほぼトレードオフの関係になるものの,所要時間短縮や混雑緩和など費用減少以外の便益も一定額発生することが分かった.以上の結果を踏まえ,実現のためには行政による支援が重要であることを指摘した.

  • -ピーチライナーを例として-
    森川 高行, 永松 良崇, 三古 展弘
    2004 年 7 巻 2 号 p. 020-029
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    需要予測における誤差要因を解明するため,愛知県小牧市の名鉄小牧駅と桃花台ニュータウンを結ぶ桃花台線ピーチライナーを取り上げ検証した.計画者が4段階推計法を用いて行った需要予測値約31,000人/日は実績値約2,100人/日の約15倍の過大予測であった(比較年:1991年).分析の結果,ニュータウン入居者数の予測誤差による「発生」段階で約1.7倍,分担率曲線の時間移転性や競合路線の未考慮による「分担」段階で約7倍の誤差が確認された.計画者と同じデータを用いて構築した非集計モデルでは,競合路線と予測時点の社会経済属性の前提が適切であれば,予測が実績に大きく近づくことが示された.

報告
  • -東海道新幹線を例として-
    浅見 均
    2004 年 7 巻 2 号 p. 030-036
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    東海道新幹線に長期不通が発生した場合,深刻な社会的損失が発生する可能性がある.なぜなら,東海道新幹線が分担する需要は大きく,かつ列車を迂回運転できる代替ルートが今のところ存在しないからである.本研究では,東海道新幹線の代替ルート構築による効果を,代替ルートが存在するネットワークにおける,長期不通に伴う社会的損失の緩和ととらえ,東海道新幹線を例としてケーススタディを設定し,定量的に評価した.その結果,東海道新幹線の代替ルートが存在する状況においては,存在しない状況と比べ,東海道新幹線が不通になった際の利用者流動の減少幅が小さくなることがわかった.

    社会的損失は,いずれのケースにおいても緩和されることを明示した.特に実際の現金収受を伴う損失において,東海道新幹線と多くの結節点を持ち迂回時間が少ないケースでは,顕著に大幅な損失緩和となることが確かめられた.

  • -3つの軸でとらえた特徴と考察-
    中野 宏幸
    2004 年 7 巻 2 号 p. 037-049
    発行日: 2004/07/30
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,1990年代における保守党政権時代を中心に,同年代後半の労働党政権と対比させながら,ロンドン及びイングランド地方圏の地域交通行政の仕組みや取組みについて,①行政の機能・地域的分化の度合(Fragmentation),②行政の中央集権化の度合(Centralisation),③市場原理の導入等を通じた行政の関与限定・縮小の度合(Privatisation)という3つの軸を切り口として,その特徴や議論を整理した.これにより,ロンドン,イングランド地方圏ともに,地域的あるいは機能的な細分化は,民営化の進展とあいまって,政府によるコントロールを強めることになる一方,関与主体が多数化する中,パートナーシップなどの民間との連携の枠組みが活用されたことが明らかとなった.90年代を通じた地方自治体構造改革等を経た英国での経験・議論は,我が国の今後の地域交通政策の展開に示唆を与えるものである.

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