本研究は,交通時間と交通時間節約価値との関係を我が国の実データを用いて分析することを目的とする.まず,交通時間と交通時間節約価値との関係に関する基礎的な分析を行い,次に,時間配分モデルを用いて非線形効用関数に基づく交通時間節約価値計測式を導出する.その上で,観光目的の都市間幹線交通の機関選択行動の実績データを用いて,多項ロジットモデルのパラメータ推定を行い,その結果を用いて交通時間節約価値を求める.分析結果より,交通時間の増加に伴って,交通時間節約価値が減少する可能性があることが明らかとなっている.その原因として,消費者の時間および所得の制約条件変更行動の可能性ならびに移動の不効用緩和行動の可能性等を考察している.