本研究は,交通時間と交通時間節約価値との関係を我が国の実データを用いて分析することを目的とする.まず,交通時間と交通時間節約価値との関係に関する基礎的な分析を行い,次に,時間配分モデルを用いて非線形効用関数に基づく交通時間節約価値計測式を導出する.その上で,観光目的の都市間幹線交通の機関選択行動の実績データを用いて,多項ロジットモデルのパラメータ推定を行い,その結果を用いて交通時間節約価値を求める.分析結果より,交通時間の増加に伴って,交通時間節約価値が減少する可能性があることが明らかとなっている.その原因として,消費者の時間および所得の制約条件変更行動の可能性ならびに移動の不効用緩和行動の可能性等を考察している.
アジア諸国の急激な経済発展を背景として,コンテナターミナルの大規模化,IT化等を進めた香港,シンガポール,釜山等のアジアのコンテナ港湾が急速に港勢を拡大している.一方,伝統的なアジアのコンテナハブ港湾であった神戸港を始めとするわが国のコンテナ港湾の国際競争力は低下の一途をたどっている.本論文では,わが国のコンテナターミナルの競争力強化に向け,国及び港湾管理者が平成17年度から実施している特定国際コンテナ埠頭支援政策について,国民経済上の費用対効果及びターミナルオペレーターの収益性並びに公的部門が行う支援策としての財政効率性について評価を試み,支援策の意義と展望を考察する.
我が国の空港容量の拡大は滑走路を新設する等のハード面の対策が主に取られてきたが,今後は航空管制の柔軟な運用による容量増加等,ソフト面の対策も十分に検討することが必要である.航空機材によって,輸送能力,速度,安全間隔,騒音被害などの特徴がそれぞれ異なることから,これらの特徴を考慮した航空管制は空港容量の増加に効果的であると考えられる.本研究では,国内航空需要が集中する羽田空港を対象に,航空機材ごとの特徴を再現できるシミュレーションの開発を行い,管制運用上の工夫による空港容量の増加可能性及び容量増加に伴う利用者利便や航空機騒音を定量的に評価した.
鉄道プロジェクトの評価手法については,平成9年に費用対効果分析を基本としたマニュアルが整備され,これまで多くのプロジェクトの採択場面で活用されてきた.しかし,近年の公共事業評価を取り巻く環境の変化等を受けて改訂の必要性が高まり,平成17年7月に新しいマニュアルが策定された.本稿は,そのマニュアルにおける評価の基本的考え方とマニュアル策定の経緯について報告するものである.具体的には,マニュアルを策定するワーキンググループでの議題のうち,①総合的な評価への対応,②マネジメント的視点との整合性確保,③費用便益分析手法の改訂について,既存の関連調査・研究やワーキンググループでの議論内容,今後の課題を中心に述べる.なお,マニュアルの内容については付録にその概要を示す.
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