トランスパーソナル心理学/精神医学
Online ISSN : 2434-463X
Print ISSN : 1345-4501
全体性を目標とする心身医療の試み
プロセス指向心理学が有効であった強迫性障害の一症例
深尾 篤嗣 村川 治彦
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 11 巻 1 号 p. 48-55

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抄録

プロセス指向心理学(POP)は、問題を普段の意 識状態(一次プロセス)が不都合で否認したい自分 の一部(二次プロセス)と葛藤を起こした状態と捉 え、より大きな存在からの大切なメッセージとして 扱う。西洋的自我が「完全性」を目標とするのに対 して「全体性」を目標とする。強迫性障害の症例を 基に、心身医療へのPOP導入の意義について考察し た。 【症例】30歳代女性。前医で薬物療法とカウンセリン グを受けても症状が持続していた。X-13年、職場の派閥争いを機に強迫性障害を発症。SSRI治療にても 改善不良のため、X+3年9月よりPOPを導入。面接や ワークを通じて徐々に患者は、「完璧主義、潔癖症」 という一次プロセスの半面、「関係性」という二次プ ロセスの存在に気づき、全体性の回復がみられた。 X+6年現在、患者の完全主義、潔癖症は改善し、結 婚、出産や社会貢献を望むように変わっている。 【結論】POP導入により、完全性と全体性、cureと healingを両立させる新しい医療へのパラダイムシフ トが促される。

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© 2011 日本トランスパーソナル心理学・精神医学会
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