トランスパーソナル心理学/精神医学
Online ISSN : 2434-463X
Print ISSN : 1345-4501
心理療法家にとっての公案の意味
塚崎 直樹
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 11 巻 1 号 p. 71-77

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抄録

精神科の治療を行っているとき、治療者は知らな いうちにある種の前提をもうけて、その前提の上で治療を組み立てている。患者が、治療者の設定した 前提を踏み外すような言動を行ったとき、治療者は衝撃を受け、自由に対応することができない。その ような治療者の混乱を患者の側が察知してしまうと、 治療者がどのように取り繕っても、長期的には治療が行き詰まるか、挫折してしまう。治療者として高く評価されてきた人々は、何らかの形で、治療基盤を深めていく努力をしていたと考 えられる。ユングやフロイトの実践の中に、それら の一端を見ることができる。患者からの問いや要求 に深く聞き入ると、そこには治療者の力を高める促 しが含まれていることがわかる。その構造は、公案のもっている性質と共通点が認められる。

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© 2011 日本トランスパーソナル心理学・精神医学会
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