2013 年 13 巻 1 号 p. 93-113
臨死体験は、典型的には死に近づいた人や何らかの 強い危機状態にある人に起こる、超越的で神秘的な要 素を帯びた体験である。本論考では、半構造化された インタビュー調査から得られた17例の日本人の臨死体 験事例に関して、臨死体験による死生観の変容の特色 を明確にするために、臨死体験者と、臨死体験を伴わない生命の危機状態から回復したガンの患者との比較 を試みた。ガンからの回復者には、死という終わりを 見据えて生きる態度が見られ、死のこちら側を包括す る時間意識が形成されていたのに対し、臨死体験者は 死の先の領域を意識し、死の向こう側を包含する時間 意識を獲得していることがわかった。結論として、臨死体験は個人の死生観の拡大を促していることが導かれた。