2019 年 23 巻 1 号 p. 14-21
強度枝打ちを実施した21年生のヒノキ林に立ち枯れ被害が発生した.被害は,斜面上部の適潤性森林褐色土(偏乾亜型)に集中し,斜面下部では少なかった.枝打ち程度と被害の関係は,枝打ち幅が大きい個体ほど被害が多かった.夏期全体の降雨量は,平年並みだが,7月中旬から8月初旬にかけて19日間の無降雨期間があった.被害木には穿孔性害虫のマスダクロホシタマムシ,ヒメスギカミキリ等の加害跡を確認した.以上のことから,強度枝打ち,偏乾亜型土壌,連続無降雨,穿孔性害虫といった水分通導を停滞させる要因が認められた.それらの要因の中で穿孔性害虫は,直接的な樹木衰弱の要因ではないことが推論された.このような状況の中で,枝打ち長率(打ち上げ幅/樹冠長)が60%未満の個体群は被害を免れていた.被害を受けなかった個体群の枝下の幹直径を調べたところ,その幹直径は7cm以上であった.調査地では,瓶ビール中瓶の太さ以上の幹直径で枝打ちを止めておけば,枝打ち長率が60%未満におさまり,被害を回避できた可能性が高いことが判明した.