樹木医学研究
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論文
ブナ林の保全に向けたブナハバチ防除のためのジノテフラン樹幹注入手法の開発
谷脇 徹
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2024 年 28 巻 4 号 p. 181-189

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抄録

ブナ成木への樹体影響と環境影響を抑えながら適切な時期にブナハバチを防除できるようにするため,ジノテフランの樹幹注入について,異なる注入時期(展葉前と展葉後)と注入間隔(周囲長で15 cmと25 cm間隔)による防除試験を行った.あわせて注入一年後の残効性を調べた(前年注入).卵への防除効果は展葉前(産卵前)注入のほうが展葉後(産卵後)注入,前年注入および対照区より有意に高かった.幼虫への防除効果は注入間隔の違いによる影響はあるものの展葉前並びに展葉後に注入した場合はどちらも前年注入および対照区より有意に高かった. 注入木の食害割合は注入間隔や注入時期にかかわらず,産下卵密度が高くても樹冠の10%以下に抑えられた.注入孔数を減らして樹体影響を抑えながらブナハバチへの高い防除効果を維持するには25 cm間隔での注入が適していると考えられた.防除効果は翌年まで持続しないため,ブナの葉を利用する昆虫への影響は施用年に限定された.

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