樹木医学研究
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論文
樹木医のカルテに見られる大型樹木の衰退の傾向と原因
塩原 貴浩濱野 周泰濱谷 稔夫
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2002 年 6 巻 1 号 p. 3-12

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抄録

1996~'98の3年間に全国の樹木医によって調査,診断あるいは処置された大型樹木のカルテから1,041枚を抽出し,これらに記述されている衰退現象を,材質腐朽,物理的損傷および衰弱の三つの症状に分類し,後の二つをさらにいくつかに細分した上で,それぞれの本数,発生率,生育立地および原因と樹体の大きさ(100 cm刻みの幹周階)との関係を調べた.その結果,次の傾向が明らかになった.(1)材質腐朽と物理的損傷の発生率は幹周が大きくなるほど増加し,衰弱の発生率は幹周が大きくなるほど減少する.(2)材質腐朽は幹に多く見られ,かつどの幹周階でも80%以上の高率を示す.物理的損傷は枝に多く発生し,小さいものでは強剪定の害,大型のものでは気象害が多くなるが,根系踏み荒らしの害はどの大きさでも認められる.衰弱は枝・葉に多く,土壌環境の劣悪化によるものが病虫害より多い.また,資料数の多いイチョウ,スギ,ケヤキ,クスノキ,ソメイヨシノの5種を種別に検討したところ,独特の衰退の傾向や特徴を示すものもあった.

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© 2002 樹木医学会
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