Tropics
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ボルネオ島北東部の大規模開発地域における初期二次遷移のバイオマス変化
大塚 俊之
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2001 年 10 巻 4 号 p. 529-537

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抄録
ボルネオ島キナバル山の裾野の高原地域では1980年代から大規模な開発が始まり,低地帯から下部山地帯の自然林はほとんど姿を消した。そこで本研究ではこのような大規模模開発地域での耕作後10年程度までの初期遷移の組成とバイオマス変化を記載し,他の熱帯地域でのバイオマス変化と比較しながら,植生の発達に大規模開発がどのような影響を与えるかについて検討した。初期遷移の速度は非常に速く,1年草が優占する放棄後1年目のプロットでもすでに低木種の侵入が見られた。3年目のプロットではEupatorium odoratumのような低木種が主に優占したが,高木種が林 冠 層をまばらに形成した。Treme orientalisは3年目ですでに最大直径6.5cm,最大樹高4.4mまで達し,10年目には群落高は13mにも達する森林が形成された。このような生活形組成の急速な変化に伴い,植生の地上部バイオマスも,4ケ月目237 gm-2,1年目650 gm-2,3年目1573 gm-2,10 年目には3463 gm-2 まで急速に増如した。しかしその他の熱帯地域での初期二次遷移のバイオマス変化と比較すると,イネ科草本と低木が優占する3 年目までほほぼ同じような割合て増加しているが,森林群落となった10 年目のバイオマスはかなり低い値となった。本調査地は標高が高いためにパイオニア樹 種が少ないと思われるが,本来の下部山地帯性植物の侵入や定着が見られないことからも,森林の大規模開発によるバイオマス変化への影響も考えられた。
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© 2001 日本熱帯生態学会
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