抄録
本稿はA.ストラウスの相互行為論における,パーソナルな行為者が有するアイデンティティの変容と持続性について検討する.
諸状況においてパーソナルな行為者が意図的であれ非意図的であれ集団の成員として行為する(名づける)とき,その行為者はその行為が示す集合的アイデンティティを有する.パーソナルな行為者は状況的にも時間的にも複数の集合的アイデンティティを有し,それらは時間の経過とともに変容する.またパーソナルな行為者の経歴は,同一化・脱同一化していく地位移行であり,常に新たな集合的アイデンティティを獲得するプロセスである.これがパーソナルな行為者が有する集合的アイデンティティの変容である.
パーソナルな行為者による再帰的行為としてのパーソナルなアイデンティティは,過去から未来にわたる経歴における複数の集合的アイデンティティを秩序化したものである.これは再帰的行為の時点においてその行為者が属す集団の用語法によって行われる.しかし再帰的行為の都度パーソナルなアイデンティティの正当性が問われるため,パーソナルなアイデンティティを持続させる営みは継続していく.これがパーソナルな行為者が有するパーソナルなアイデンティティの持続性である.