社会学年報
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論文
介護職の業務確立に関する一考察
―介護老人福祉施設における職種間連携を通して―
京須 希実子
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2007 年 36 巻 p. 233-253

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抄録

 本論文は,介護老人福祉施設で働く介護職が他専門職,特に密接な関係にある看護師・社会福祉士・栄養士との連携・協働を通して自らの業務内容を確立していく過程を追うことで,介護職の業務確立に関する1つの知見を提示することを目的とする.X県内の介護老人福祉施設A園・B園において参与観察及びインタビューを行い,そこで収集したデータをもとに分析を行った.
 その結果,介護老人福祉施設における介護職は,入居者の身体介助を軸に業務を行っていた.彼らは,身辺介助業務を専ら任されるようになったことで,常に入居者の傍にいることができ,その結果,どの職種よりも多くの入居者に関する情報を把握することができる状態に置かれていた.そして,彼らは,それぞれの知識に基づいてケアを行う他職種の支援を受けつつ,その情報をもとに,入居者を生活者と捉えるという独自の視点から,業務を行っていた.こうした介護職の独自性は,他職種にも認められつつあり,そこから介護職の専門性が確立される可能性も示唆される.
 しかし,こうした介護職の業務の在り方は,介護老人福祉施設の職員構成に支えられてはじめて成り立つものであって,職員構成の変化により,入居者の多様な情報を把握できる立場に介護職以外の職種がおかれたとき,連携・協働の在り方の変化及び介護職の業務内容の変化が生じる可能性も考えられる.

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© 2007 東北社会学会
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