社会学年報
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特集「ガヴァナンス論の射程」
持続可能な発展の重層的環境ガバナンス
植田 和弘
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2008 年 37 巻 p. 31-41

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抄録

 失敗する環境政策の欠陥を克服し,持続可能な発展を実現する環境政策への進化が求められている。そのためには,現代環境問題の新しい特徴と相互依存関係をふまえた重層的環境ガバナンスの構築が課題になっている.環境ガバナンスは環境政策の形成過程における環境NGOなど非政府セクターの役割が認知されてから注目されてきたが,重層性の重要性が認識されるようになったのは,EU出現以降のことである.グローバルな経済活動がグローバル・リージョナル・ローカルな環境問題の基本原因をなしている.個々の地域環境問題は世界経済のグローバリゼーションに起因するがゆえに相互に関連を持つものであるが,同時に地域固有の条件の下で現れるので均質な現象にはならない.このことは,現代において持続可能な発展の実現を阻む構造の存在を示しており,このメカニズムを解明し克服することが求められる.問われるべきは,環境ガバナンスすなわち環境問題に対するどのような政策・制度的対応と民主主義的プロセスが,持続可能な発展を現実化しえるのか,である.グローバル,リージョナル,ナショナル,ローカルといった重層性を伴い,各層間が相互作用を伴って動態化している重層的環境ガバナンスの構造と機能を明らかにし,そこへの移行戦略を構築していかなければならない.

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© 2008 東北社会学会
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