社会学年報
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特集「死と看取りの社会学――その問題圏」
看取りを支える社会を創る
―在宅緩和ケアの現場から―
岡部 健
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2010 年 39 巻 p. 5-14

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抄録

 爽秋会岡部医院は1997年の開院以来,WHOの提唱する緩和ケアの理念を達成するべくチームケアのモデル開発を行なってきた.患者・家族の希望を満たしつつ,QOLサポートを進めるなかで,医療・介護・スピリチュアリティ等を支える多職種の専門職集団(医師,看護師,薬剤師,ソーシャル・ワーカー,介護士,作業療法士,鍼灸師,チャプレン・臨床心理士)を形成するに至っている.このチームで現在年間約300名のがん患者を自宅で看取っており,在宅における看取り率も8割を超えている.
 本稿では,在宅緩和ケア医としてのこれまでの私の経験をもとに,爽秋会で行ってきたモデル形成を紹介し,そのうえで,現在,在宅緩和ケアが直面している課題を提示することにしたい.結論としては,看取りの問題は医療の再構築だけでは解決することが困難であり,社会システム全般の再構築を必要としており,そのためには社会科学的な観点からの分析が必要不可欠であることを示す.

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© 2010 東北社会学会
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